春から夏になるこの季節、トイレトレーニングを始めるご家庭も多いと思います。寒い中の衣類の着脱は子どもにとっても負担がかかりますが、薄着の季節はズボンを着脱するのも楽ですし、洋服も薄地で季節的にもすぐに乾きやすく、親にとっても子どもにとっても、トイレトレーニングを始めるにはいい季節です。さて、トイレトレーニングの進捗状況はいかがですか? 失敗続きだったり、一進一退だったり、うまくいかないことの方が多かったり、そんな状況にイライラが蓄積されていませんか?
■「なぜ、できないの?」と声を荒げたくなってしまう
いざトイレトレーニングを始めてみたら、失敗続き。そのたびに何度も着替えて洗濯をして……。絨毯の上で粗相をされた時は、後始末がより一層大変だったりします。ようやく上手にでき始めたかな、と思ったら、トイレに行くのを嫌がったり、お漏らし続きだったり、実際に上手に行くことよりも、うまくいかないことの方が多いのではないでしょうか? 親は、はじめのうちは仕方がないかな、と大らかに構えていても、度重なる失敗に段々とイライラしてきてしまう。トイレトレーニングでは失敗しても叱ってはいけないとわかっていながらも、「なぜ、できないの?」と声を荒げたくなる。こんな状態では幼稚園に入園もできないのでは? と、焦りと不安を抱えるママも多いと思います。
■トイレトレーニングの目的、専門家の見解
少し話は変わりますが、そもそもトイレトレーニングの目的は何なのでしょうか? 親からしたら「早くおしめを外して、排泄の自立を促すこと」でしょうか。一方で子どもにとってはどうなのでしょう? 児童精神科医の佐々木正美先生は、「幼児にとって排泄物は汚い物ではなく、むしろ愛おしい物なのだ」と述べています。幼児は、排泄の爽快感を覚えながらも、自分の大切な体の一部ともいえる排泄物を処理することに抵抗を感じる。幼児にとって、人生最初の二者択一を迫られるのがトイレトレーニングなのです。排泄は生理的で心地いい習慣だと身に着けるために、大切な自分の体の一部ともいえる排泄物を捨ててもいいや、という幼児の気持ちがゆっくりと育つのを待つことが大切だと、佐々木先生は言及しています。便器に長時間座らせて、排泄という行為そのものに不快感を抱かせてしまったら、その後の自律心の発達を強く傷つけてしまうことにもなりかねない、と先生は警鐘をならしています(※1)。
いかがですか? 親はとかく焦っておしめを外したがり、失敗を怖がり否定します。しかしながら、トイレトレーニングの本来の意味は、「おしめをはやく外すこと」ではないのです。「子どもの気持ちが育つのを待つこと。」この様に、本来の意味を知ると、トイレトレーニングの失敗が失敗ではなくなります。焦って結果を求めるのではなく、過程を味わう方タイミングなのですね。少し視点を変えると、物事も違って見えますね。子どもがトイレトレーニングをうまくできない時は、「洋服が濡れると気持ち悪いね、でもおしっこをすると気持ちいいね」と声をかけてあげるといいでしょう。トイレトレーニングも子どもの気持ちも、ゆっくりと育てていきましょう。
[執筆:久保木 惠子(乳幼児ママのサポートコーチ) ]
【参考】
※1. 佐々木正美著、杉浦正明編(2002)『過保護のススメ』小学館
※この記事の執筆者:久保木恵子(乳幼児ママのためのサポートコーチ)について。女性専用のカウンセリング『ボイスマルシェ』の登録カウンセラー。電話カウンセリングなので全国どこからでも利用できる、匿名で話せる、当日予約できるというボイスマルシェの特長を活かし、全国の女性たちの相談にのっている。一児の母。
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