■ 介護はまだ必要ではないと思っていたけれど…
高齢化社会が進む日本では、要介護者が増えています。母親との関係が疎遠な場合、将来介護が必要になったらと考えるだけでも気分が重くなる人がいるかもしれません。平成22年、厚生労働省が発表したの要介護者年齢階級別(※1)を見ると、80代が約25%を占めますが、70代前半でも1割、60代後半では約5%という数字が出ています。
また、若年性認知症については、推定発症年齢の平均は51.3±9.8歳(男性51.1±9.8歳、女性51.6±9.6歳)となっています(※2)。たとえば親が60代だと、大半の子供は30代で働いているか、育児奮闘中の人もいるでしょう。
そのような状況の中、介護の必要性が生じるとなかなか現実を受け容れられず、まして母親との確執がある場合、娘達の多くは複雑な心情を抱くようです。
■ 素直な気持ちになれない、暴言を吐く自分にも嫌悪
長年、距離をおいてきた母親に思いのほか早く介護が必要になったとき、娘は驚きや悲しみに加え、“怒り”を感じることも。「仕事があるのに」「子供だってまだ小さいのに」。母親を責める気持ちが湧き起こり、「母親らしいこともしてくれなかったのに、どうして私が世話をしなければいけないの?」と口をついて出てくる言葉。
しかし、怒りの後には後悔の念が押し寄せるのです。「実の親なのにこんな思いを抱くのは自分に問題があるのだ」と。実際、その怒りは母親へのストレートな感情です。しかし、もっと大きいのは母親と今後どのように関わっていけばいいのか、予測できない不安なのです。
そこでこのような場合は、まず介護に関するあらゆる情報を入手する一方、兄弟姉妹がいれば分担できる可能性もあるので、話し合いの場を持ちましょう。また、忘れてはならないのは、疎遠だった母親との関係を見つめ直す機会を作ることです。
複雑な心境を抑え込むのは無理がありますが、介護をきっかけに関係性が変わることもあります。そのためにも、自分の感情を整理すること。たとえば母娘問題の本を読んでみる、またはカウンセリングを利用する方法もあるのです。
[執筆:真香(母娘関係改善カウンセラー)]
【参考】
※1. 厚生労働省「要介護者等の状況 – 平成22年国民生活基礎調査の概況」平成22年
※2. 厚生労働省「若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要」平成21年3月19日