夫婦問題の相談内容で多いのが、結婚間もない、おもに30代の夫婦間で言い争いが絶えず、エスカレートして困っているケースです。価値観の相違だけでなく、言い方や受け止め方などによって、配偶者に対抗意識を持ってしまうのでしょうか。どんどん攻撃的な態度になってしまうようです。
■ DV相談件数、統計以来過去最多
以前から問題視されている「ドメスティック・バイオレンス(DV)」。一般的には「夫婦間での暴力」を意味しますが、恋人同士や家族の中での暴力も含まれます。
2015年1~6月のドメスティック・バイオレンスに関する警視庁への相談件数は、前年の同じ時期に比べて約25%増の2,441件で、2000年の統計開始以来、最多だったと明らかにしました(※1)。
■ モラハラを経験したことがある人は5割
また、DVの一種とも言われる「モラル・ハラスメント」も増加傾向にあります。相手を無視したり脅したり、子どもやペットなどの弱者への虐待など、言葉や態度で攻撃する精神的な暴力を意味します。
日本法規情報 法律問題意識調査レポート「法律トラブル意識調査」(※2)によると、「夫婦間のモラハラ、経験したことがある」という人が5割存在し、結婚生活において経験したことがある行為についてアンケート調査を行ったところ、「外面」がよく、「良い旦那さん(奥さん)ですね、と言われるが、家庭での態度が全く違う」という回答が約3割を占める結果となりました。
当サイトでは、以下のように警鐘を鳴らしています。
“相手を傷つけているという認識がないために、このようなモラル・ハラスメント行為は繰り返される傾向にあり、被害者にとっては、被害意識が積み重なり、病を発症するケースが増えてきています。被害に遭った場合は、加害者と早めに距離をおき、耐えるだけでなく周囲や専門家の力を借りて、早期に対応を図ることが大切となります”
また、男性が加害者と思われがちですが、最近は、女性の加害者も目立っています。
■ 加害者、被害者ともに自覚しにくいのが特徴
筆者のカウンセリングでも、DV・モラハラの被害者は「自分が相手を怒らせてしまった」「自分が至らないせいだ」「自分さえ我慢すればいい」と考え、自分を責める声が多く聞かれます。
被害者だという自覚があまりないのが特徴ですが、暴言・暴力は決して良いことではありません。一人で悩まずに、まずはカウンセリングを受け、心の声に耳を傾け、事実をありのまま話すことから始めてみてください。メンタル面のサポートを行いながら、関係性の改善をはかっていきましょう。
[執筆:渡辺 里佳(夫婦関係・離婚カウンセラー)]
【参考】
※1. 警視庁「DV相談件数が過去最多 警視庁」2015年7月24日
※2. 日本法規情報 法律問題意識調査レポート「法律トラブル意識調査」