夏休みや盆に実家に帰省する方も多いと思います。久しぶりに親に会うからこそ、親の言動の違和感に気づきやすい機会でもあります。親は元気だからまだ大丈夫、と決めつけずに、認知症の兆候がないかを意識してみましょう。この記事は、親の認知症を心配する子世代が押えておきたいポイントを、心理カウンセラーであり、認知症介助士の筆者・守帰朋子が解説します。
目次
電話では気づかない親の変化
電話で親と話しているときに、「大丈夫？」と聞けば、「大丈夫！」と返ってきます。元気に話せるからと安心していると、対面したときにショックを受け、「ずいぶん老け込んだ」「なんだかおかしい」と違和感を持つことがあります。その違和感を「暑さのせい」「年のせい」と片づけず、認知症の早期発見につなげましょう。
認知症の始まりかも？ 注意したい８つのサイン
帰省の折、このような親の変化はありませんか？
＜8つのサイン＞
1． 激やせ・激太り
2． 冷蔵庫に賞味期限切れの食材が満杯
3． 片付けられない・探し物が増える
4． 料理の段取りが悪い・鍋を焦がす
5． 小銭がドッサリ・タンス貯金
6． 薬を飲み忘れ・受診日キャセル
7． 反応が鈍い・会話がかみ合わない
8． 夏に厚着
上記は、五感（視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚）の衰えとも関係しています。白内障の手術など、かかりつけ医以外の新しい医師との関係で緊張し、急に記憶障害が現れることがあります。いちばん混乱し困っているのは本人です。「どうしたの、しっかりして！」と励ますと逆効果です。否定したり騒いだりせず冷静に対応しましょう。
認知症の中核症状
認知症の中核症状には、「記憶障害」「実行機能障害」「見当識障害」「失認・失行・失語」「理解・判断力の低下」があります。それぞれの症状が独立して現れるわけではありません。「もの忘れもなく、饒舌だから大丈夫」と思っていると、サインを見逃すので注意しましょう。
「記憶障害」…認知症の中核症状
ものを覚える機能の「記銘」、覚えていることを保つ機能の「保持」、覚えていたことを引き出す機能の「再生」の3つがうまく機能しなくなります。購入したことを忘れ何度も購入し、冷蔵庫／冷凍庫が満杯になります。物をどこに置いたか忘れ、探し物が増えると部屋が散らかります。薬を飲み忘れる、受診予約を忘れると病状が悪化します。主治医に相談、お薬カレンダー、ヘルパーに依頼などの対応が必要です。何度も同じことを聞くのは、聞けば教えてもらえて不安が解消できるからです。
「実行機能障害」…認知症の中核症状
今までできていたことができなくなり、ものごとを進める段取りがうまく行かなくなります。料理の段取りをイメージできず、味付けも変わり、料理ができなくなります。帰省したときにいつも外食・出前では気づけません。洗濯機、掃除機など家電の使い方が分からなくなり、家事ができなくなります。
「見当識障害」…認知症の中核症状
「見当識障害」の「見当識」とは、自分が置かれている状況（年月日、時間、季節、場所、人物など）を正しく認識する能力。見当識に障害が起きると、今日は何月何日か、今が何時か、今自分がどこにいるのか、誰と話をしているかなどが正確に認識できなくなります
「失認・失行・失語」…認知症の中核症状
「失認」は、ものごとを理解できない症状。「失行」は日常動作ができない症状。「失語」は言葉が理解できず、言葉が出にくくなる症状。聴力の低下もありますが、会話のスピードに脳がついて行けず、内容が理解できずに会話がかみ合わなくなり、いきなり怒り出すこともあります。
「理解力・判断能力の低下」…認知症の中核症状
夏に厚着、冬に薄着で外出など、状況に応じて適切な選択・行動ができなくなります。食欲不振ではなく、食事をしないのはセルフネグレクト。栄養不良になると認知症が進行します。認知症を発症すると異常なほど食欲旺盛になりますが、これは食べたことを忘れることに加え、認知機能低下により満腹感を感じないからです。
お金の計算ができなくなると小銭が増えます。支払う額に見合う札を出せないからです。気軽に高額商品を注文する、安易にお金を貸すなど、適切な判断ができなくなります。詐欺に遭うリスクも増えます。
まとめ
認知症の症状は個人差も大きく、365日同じではありません。8つのサインに気づいたら、兆しを見逃さず、専門家を交えたチームで情報共有して、サポート体制を早目に整えましょう。
［執筆：守帰 朋子（母娘問題研究家）］
※画像：Fast&Slow / PIXTA（本文とは直接関係ありません）