ある掲示版に9カ月の赤ちゃんがいるママからお悩みが投稿されました。内容は、「出産後、夫を愛せなくなった。ホルモンの変化のせいかと思ったがいっこうに治らず。現在、専業主婦で子供を連れて離婚すべきかどうか悩んでいます」と。
■ 何が起こっているの?
このような悩みはなにもこのママだけではありません。同じような悩みをもつ女性は非常に多く、NPO法人マドレボニータの調べによると都市部の女性の52%が「産後に離婚したいと思ったことがある」と答えています。
最近では、このような産後に起こる夫婦愛低下現象を、もはや「産後ブルー」「育児ノイローゼ」と一時的・限定的な現象としてではなく、「産後クライシス」という社会現象として捉えるようになりました。産後クライシスとは、出産や育児により、良好な夫婦関係が築けなくなり、最悪の場合は離婚にまで至ってしまう現象のことを指します。
■ なぜ”産後クライシス“は起こるの?
本来であれば家庭を盤石にさせるはずの、待望の我が子の誕生が、なぜこうしたクライシスへ繋がるのでしょうか。
288組の夫婦を5年間調査したお茶の水女子大学・菅原ますみ教授らの研究によると、子供の年齢が0、1、2歳と上がるにつれ、「夫(妻)への愛情を実感する」割合が、妻・夫ともに減少。特に女性側での夫に対する愛情減少が、産後に顕著に起こっていることがわかりました。教授によるとその原因は「出産後の家事育児への非協力、理解不足、ねぎらいの言葉の不足」。特に里帰り出産をした女性に多く、異口同音で「里帰り中の安心感と里帰り後の夫の非協力とのギャップ」に苦しみ、「夫より実家の方が頼りになる」と考え、離婚を検討し始めるといいます。
■男性も傷ついている
「じゃあ、夫が妻にもっとねぎらいの言葉をかけたらよいのでは?」となると思うのですが、問題はそんなに簡単ではないようです。男性側も少なからず「出産・育児」を通じて当惑していたり傷ついていたりするからです。
男性側の意見を聞いてみると「子供が生まれてから、それまで自分のものだと思っていた妻が子供のものになっていた」とか、「家にずっといる妻が怠けているようにみえ、応援できない」とか、「口を開けば自分がいかに大変かをぶちまけられ、正直家にいたくないから残業している」等という声が多数きかれました。
双方歩み寄りが必要なことは明白なのですが、二人で話をしても恐らくヒートアップして、勢いで離婚などということにもなりかねません。二人のことをよく知り、公明正大な判断ができる第三者を対話の間に入れることも意外と有効です。
夫婦のいざこざを他人に話すというのは抵抗感があるかもしれませんが、どこの家庭も同じようなもの。思い切って頼れば、「ウチも同じ!」と共感されることは多いのです。第三者を通じて会話をするほうが、互いにある“思いやり”の心が伝わるということもあります。ぜひ試してみてください。
[執筆:マキコ・アサエダ(産後ライフプランナー) ]
【参考】
※ NHKあさイチ「夫婦を壊す?! “産後クライシス”」
※ ベネッセ「初めての出産後、夫婦の愛情低下を防ぐカギとは」