■ 児童虐待通告が上半期最悪の件数に

先月9月、警察庁発表によると児童虐待の件数は、上半期で1万3037件と最悪の記録になりました(※1)。児童虐待というと世代間の連鎖が取りざたされますが、それを止める方法はあるのでしょうか?

 

■ 母親と同じことを言っている自分に気づいた

母娘関係改善カウンセリングを行っている筆者のところに来られたクライアントBさんは、幼稚園児の男の子がいる母親です。Bさんの子は時々、友達と喧嘩して幼稚園の先生から注意を受け、Bさんはママ友達に謝ることもあるそうです。

Bさんの幼少期、母親はいわゆる教育ママでした。いつも学校の成績やお稽古ごとでよい結果を出さないと猛烈に怒られ、物を投げつけられたことも。Bさんは「私はそんな母親にはならない」という思いが強く、おやつや服も手作り。水泳教室の送り迎えもして、育児に全力を尽くしている状況です。

Bさんはある日、水泳教室に行くのを嫌がる子どもに堪忍袋の緒が切れ、思わず怒鳴ってしまいました。「ママはあなたのために一生懸命やっているのよ。なのに、どうしてわかってくれないの!」。それからも叱ることが増え、「あなたのためなのよ」を連発するように。Bさんは今後、子どもに手を上げてしまうのではと不安を抱え、カウンセリングに来られたのです。

 

■ 連鎖を止めるには

「あなたのために」。これはBさん自身が母親から何度も言われていた言葉です。「母親のようになりたくないと思っていたのに、同じ言葉を浴びせていた」。Bさんのように親から虐待を受けた場合、自分も同じようになるのではと思う人は多く、それがエスカレートするのではと不安が増すのです。

たしかに、虐待は連鎖すると考えられており、2001年の調査では次のようなデータが出ています。被虐待児が親になって子どもを虐待した割合は男子で69.4%、女子で81.8%とのこと(※2)。ですが、被虐待経験があっても、自分の子を虐待しない親も存在し、必ずしも虐待の連鎖が増えているわけではありません。

Bさんはカウンセリングで、声を荒げるときに共通したパターンがあることに気がつきました。それは、夫との口論やママ友との言葉の行き違いなどで、ストレスがたまっている時に起きていたのです。

 

虐待され、それが嫌で自分は絶対にそうはならないという意識を持つのと、自覚なく虐待するのとでは異なります。大事なのは、子どもを叱りつけたい気持ちが生じたとき、まずは自分の状況を見つめること。何か問題があるはずで、それを認識するのも虐待の連鎖を止めることにつながります。

[執筆:真香(母娘問題カウンセラー), 2014年10月6日]

 

【参考】
※1. 『毎日新聞』「児童虐待通告:上半期、最悪1万3037件 警察庁発表」2014年9月25
※2. 長谷川博一(2003)『たすけて!私は子どもを虐待したくない―世代連鎖を断ち切る支援』径書房、pp.21 より