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父の死で母の生活意欲が低下…娘が支援できることは?
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父の死で母の生活意欲が低下…娘が支援できることは?

今年8月末、愛知県の一人暮らしの男性宅と隣家が全焼した事件、火元の住宅は「ごみ屋敷」として有名でした。不要な物にさえ固執するこうした行動は「セルフネグレクト(自己放任)」の可能性があります。

在宅の高齢者が、生きていく上で必要な行為の意欲を失う「セルフネグレクト」に陥ると、生活環境が不衛生になることもあります。2015年9月3日付けの『朝日新聞』で、東邦大の岸恵美子教授はセルフネグレクトの原因を「病気や配偶者との離別など生活環境の変化をきっかけに、物に固執するケースもある」と指摘しています(※1)。

セルフネグレクトに関する内閣府の調査によれば、自治体が把握しているセルフネグレクトの報告件数の中で、一人暮らしの割合は約7割。また、家族・親戚の親密度については「全く希薄・やや希薄」を合わせると約7割となり、問題の背景には孤独が浮かび上がります(※2)。

 

■ 父親の死で母親の心境が変化?

母娘関係改善カウンセラーの筆者の元へは、母親がセルフネグレクトではないかと不安を感じて来られる方も増えています。

1年前に父親が亡くなり、東北の実家には母親が一人暮らしという主婦のA子さん。70代前半の母親は働き者でしたが、A子さんが新盆で帰省したとき、部屋のあちこちに物が雑然と置かれ、衣類も放置されていました。さらに驚いたのは、料理好きだった母が痩せてしまい、台所もあまり使われていないように見えたことです。心配になったA子さんは同居を提案しましたが、故郷を離れるのは嫌だと言って母親は聞き入れません。

このようなケースでは、定期的に母親と連絡を取れるようにしたいものです。また、独居老人のために自治体が提供している行政サービスの情報も入手しましょう。ソーシャルサポートを活用する一方で、頼れるのは近くの親戚や隣近所の人達です。たまに様子を知らせてくれる、何かあればすぐに連絡してくれる、その存在があるというだけでも、離れている娘にとっては不安が少し軽くなるはずです。

[執筆:横山 真香(母娘関係改善カウンセラー)]

 

【参考】
※1. 『朝日新聞デジタル』「「ごみ屋敷」どうすればいいの?」2015年9月3日
※2. 平成 22 年度 内閣府経済社会総合研究所委託事業「セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査―幸福度の視点から報告書」平成23年3月

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