筆者が夫婦関係・離婚カウンセラーとしてご相談をお受けする中で、よくいただく質問のひとつに「養育費の相場はいくらですか?」というものがあります。その場合、筆者はご相談くださった方に「算定表」の存在をお知らせしています。
■ 養育費と婚姻費用の目安を知ることができるのが算定表
「算定表」とは、「養育費・婚姻費用算定表」のことで、夫と妻の年収が分かれば、そこから養育費と婚姻費用の目安を知ることができるものです。
ここで簡単に用語の説明をしておきますと、「養育費」とは離婚後に子どもの生活費として親が負担をする義務を負うものです。一方、「婚姻費用」とは結婚生活にかかる費用、つまり生活費のことですが、それが“婚姻が継続している間の費用”ということから、子どもだけでなく妻(夫の場合もあります)の分の生活費も含まれている点が、養育費とは異なる点です。ですから、この算定表でも、夫婦の年収や子どもの数などの条件を同じにした場合、養育費よりも婚姻費用の方が高くなっています。
■ 算定表の額は、目安として参考になるけど絶対ではない
この算定表は、東京と大阪の裁判官の共同研究により作成されたもので、裁判所での調停や裁判でもその金額を決める基本として用いられています。
「ということは、その表にある金額が絶対で、それ以上はもらえないの?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。離婚するか否かは、基本的に当事者の自由であるのと同じように、養育費や婚姻費用の額も基本的には当事者で自由に決められるものです。
そもそも、養育費や婚姻費用といった生活費は、その家庭の生活状況などによって異なってくるもの。なので、その額について「相場」などはないとも言えるのですが「一体どうすればいいのか見当もつかない……」という場合などには、この算定表の額は「目安」として大いに参考になるでしょう。
養育費にしても婚姻費用にしても、自分達の生活状況に合った額を当事者間で話し合って決めることができればベストですが、双方の事情や思惑、信頼関係の崩れなどから、実際にはそうはいかないことの方が多いでしょう。この算定表は「養育費・婚姻費用算定表」で検索をかければ、インターネット上でも簡単に見ることができるので、目安が知りたいという方は一度確認されてみてはいかがでしょうか。
[執筆:糸瀬 彩湖(行政書士/夫婦カウンセラー)]
【参考】
※ 鈴木幸子、柳沢里美(2015)『改訂3版 離婚のための準備と手続き』新星出版社
※ 中里妃沙子(2013)『悩む前に知っておきたい 離婚の手続き』日本文芸社