子供の頃、ジュースの入ったコップをこぼした時。親から叱られてもその場で終わればいいのですが、何より怖いのは怒りを引きずる親の態度ではありませんでしたか?
親の中には感情的に怒る人もいます。子供に向かって手を上げる身体への暴力もありますが、口をきかない、無視するなど精神的な負担を負わせる行為もあります。さらにドアをバタンと閉める、わざと物を乱暴に置くなど不必要な音をたてる事で、子供に恐怖心を抱かせてしまうケースもあります。
これが度々重なるようだと、子供は大きな音に対しとても敏感になります。母娘関係改善カウンセラーの筆者の元には、大人になった今でも音に過剰に反応し苦しんでいる方が来られます。
■ 冷蔵庫をバタンと閉める上司に母親を重ねてしまう
都内の編集プロダクションに勤めるD子さん(29歳)は、副編集長(女性)の行動から生じる音が常に気になり、無視できないほどになっていたと言います。
例えば、副編集長は仕事上で何か気に入らないことがあると、冷蔵庫をわざと乱暴に開閉する。室内を移動する時、彼女はいつもせっかちに歩くため、ヒールのカツカツ鳴る音が響いてイライラしてしまう。
D子さんは副編集長が別の部署から異動してきた時から、何となくウマが合わないと感じていたのですが、明確な理由はわかりませんでした。しかし、副編集長が不必要に出す音のせいでD子さんは気がついたのです。機嫌が悪くなると大きな音を立てることで怒りを発散させていた母親と重なることが……。
音を聞くたびビクッとしてしまう。そんな自分は、子供じみていて嫌悪感が募るというD子さん。しかしD子さんのケースは決して珍しいものではありません。バタンと閉まる音を聞いた途端に母親の怒った顔がフラッシュバックする人もいます。これは音により怒られた当時の記憶が引き起こされるのです。
D子さんのようなケースの場合、副編集長が怒っているのは何かを明確にする必要があります。自分がした事で怒っているのかという推測をやめ、勇気を出して直接聞くなど原因を明らかにした方がいいでしょう。憶測は不安を掻き立てるだけです。副編集長にたずねることで他の理由がわかり、その後のコミュニケーションをとりやすくなる可能性があります。
[執筆:横山 真香(母娘関係改善カウンセラー)]