「死後離婚」という言葉をご存知でしょうか。「死後離婚」という言葉はけっこうインパクトがあるので、一時期メディア等でもこの言葉が取り上げられて話題となりました。
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義実家と縁を切りたい人が急増している
「死後離婚」は法律用語ではなく、正しくは「姻族関係終了」といいます。文字通り、姻族との関係を終了することです。実際は死後には離婚できませんし、配偶者に先立たれた後に届けを出すので、俗称で「死後離婚」と呼ばれるようになったようです。
政府統計(※1)によれば、死後離婚する人の数は、2009年度には1823件、2010年度は1911件となり、最新の2019年度は3551件と、10年間で2倍近く増えています。夫からも届けを出すことは可能ですが、夫側からの申請は少ないようです。ちなみに、ピークは2017年度の4895件でした。(やや減少傾向?)
■ 姻族関係が続けば、扶養や介護の義務が生じる
「姻族」とは、配偶者の家族のこと。扶養義務が課される可能性があるのは「3親等内の親族」。義理の親子は1親等の親族なので、姻族関係が続けば扶養義務の対象となります。また、姻族が経済的に困難な場合は「扶助」しなければならない(民法730条、民法877条1項) とあり、同居していなくても扶養義務を追われる場合があります。
「姻族関係終了届け」提出の理由として、主に以下が考えられます。
- 義理親との不仲。関係を絶ちたい
- 配偶者との関係がよくなかった
- 義理親の介護の負担から逃れたい
- 義理親と同居したくない
- 法要、行事に関わりたくない。仏壇を管理したくない
- 夫や夫の親族と同じ墓に入りたくない。自分の実家に入りたい
■「死後離婚」のメリットとデメリット
「姻族関係終了届け」は、家族の同意は不要で、報告義務もありません。戸籍に「姻族関係終了」と記載されるだけで、夫と他人になるわけではないので、遺産相続も遺族年金ももらえ、経済的なデメリットはほとんどありません。
ただし提出したら取り消しはできません。子どもと義理親との関係は続きますから、黙って提出した場合、戸籍謄本から気づかれることがあり、子どもとの関係が悪化するケースもあります。
死後離婚は慎重に考える必要があり、筆者はあまりおすすめしていません。お墓に入る、入らない。介護する、しないは、届けとは関係ありませんし、黙って届けを出すのはトラブルのもとです。死後離婚することのないように、普段から想いを言葉にし、コミュニケーションを図ることこそが大切です。親族間の悩みについてもカウンセラーがご相談にのっています。
[執筆:渡辺 里佳(夫婦関係・離婚カウンセラー)]
【参考】
※1.政府統計の総合窓口「e-Stat 統計で見る日本」より
※写真:PIXTA、本文とは直接関係ありません