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今の自分に満足できない「もっともっと」癖が不安を増大
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今の自分に満足できない「もっともっと」癖が不安を増大

向上心を持って常に自分を高めていくことは、本来とても素晴らしいことです。自分の可能性を引き出し、今の自分をさらに成長させることができれば、自分への自信に繋がります。ところが、人一倍頑張り屋さんで、多くの成果を出しているにもかかわらず、「もっともっと」と何かに取り憑かれたように上を目指している人がいます。一見すると、キラキラしていて自信に満ちあふれているように見えますが、心の中は、今の自分に満足することが出来ず、不安と焦りで生きづらくなっています。

なぜ自分に満足できないのか、どうすれば生きやすくなるのかを、心理カウンセラーがお伝えします。

 

1.「最高・完璧・成長」という謎の呪文

「90点を取ってすごいね、もっと頑張れば100点を取れるよ」
「あんな強いチームに勝ったんだから、もっと上を目指そう!」
「もっともっと頑張れば、最高の学校に行けるよ」
小さい頃、こんな風に言われたことがあるかもしれません。

頑張ることがいいことで、頑張らないことはいけないことと無意識に思っていませんか。そういう思いが心の底にあると、頑張ることをやめたとたんに自分は堕落してしまうのではないかという不安がつきまといます。その不安を感じないようにするために、「最高・完璧・成長」という謎の呪文を唱え、「もっともっと」と自分を追い込むことになるのです。そしてこの呪文は、「どこまでいってもまだまだだ」という意味を裏に含んでいて、一息つきたくてもつけない息苦しさと生きづらさを抱えてしまいます。

 

2.常にライバルが出現してしまうわけは

人間であれば当然、強気なときも弱気になるときもあります。また、エネルギッシュに頑張れるときと、ちょっと休みたいと思うときもあります。ところが、「もっともっと」癖の人は、いつもいつも上を目指し頑張らないと不安になるので、弱気になることも少し休むこともできません。

そんなときライバルがいれば、しんどいときでも頑張り続けることができます。ライバルに負けたくないという気持ちを奮い立たせ、頑張り続けようとします。また、自分に敵対している人や苦手な人も自然と自分のまわりに出現させます。それによって、怒りのエネルギーを頑張り続けるエネルギーに変えているのです。エネルギーが枯渇しそうな状態のときは、本当なら少し休んで自分のエネルギーが回復するのを待つことが望ましいのですが、休むことができないため、苦肉の策でなおも突っ走っている状態なのです。

 

3.努力せずに手に入れたものは価値がない?

「もっともっと」癖がある人は、頑張って努力したことに価値を見いだそうとします。なので、自分が当たり前にできていることを褒められたり認められたりしても、ピンときません。努力を要せずできたことは、価値があるように思えないのです。

ところが、そんなに努力もせず、どんどん成果をあげている人に対して、心の中では怒りを覚える反面、羨ましくも感じます。不必要に自分と比べては、理不尽さに腹が立ったり、自分が情けなくなったりするのですが、そのネガティブな感情を打ち消すかのように、「もっともっと」と何かに邁進してしまいます。

 

4.ほどほどの指標が生きやすい人生に変える

「もっともっと」癖に支配されている人は、他者から見た自分が基準になっています。どんどん成果をあげたり頑張っていたりすると、人からどんどん期待されます。その期待を裏切れない、もし裏切ったら自分はもう二度と評価されない、そう思っていませんか?

常に他者から見た自分に意識が向いているので、いつも他者が自分に対してどんな期待をしているか考えるようになっています。だから、こんなこともできないのかと思われたくなくて、本当はビクビクしています。

この状態は、他者の中にだけ存在する自分であって、自分の中に存在する自分は実は空っぽなんです。自分の中に自分がいないので、いつまでたっても今の自分を認められないのです。他者からの見た理想の自分を作り続けることだけでは、どこか自分の軸がなく不安定になってしまい、常に不安を抱えることになります。

今までの頑張りを否定することはありません。本当によく頑張ってきたので、今の自分があるのです。また、これから頑張ることが悪いわけではありません。

他者から見た自分ではなく、自分から見た自分はどう見えてきますか? たまには休憩することも、ゆっくりくつろぐことも、楽しく遊ぶことも必要です。形だけ整えるだけでは、生きやすくなりません。たとえどんな自分であっても、今の自分にダメだしせず、こんな感じでも今はまあいいよねっていう、「ほどほどの指標」を取り入れながら、前に進んでいくようにしてみませんか?

[執筆:上土井 好子(公認心理師・心理カウンセラー)]

※画像: Rawpixel / PIXTA(画像はイメージです)

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