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保育園への上手な苦情の伝え方 歴20年の元保育士が伝授
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保育園への上手な苦情の伝え方 歴20年の元保育士が伝授

筆者は、保育士歴20年の元保育士の経験とアンガーマネジメントの知識を活かし、これまでに保育、子育てセミナーで延べ20,000人にイライラ解消法を伝えてきました。自身も2人の息子を保育園に預ける保護者としての経験があります。保育士と保護者、どちらの立場も理解できるからこその視点で、担任保育士への上手な苦情の伝え方を伝授します。

 

不安や不満を抱えていませんか?

待機児童が多いこのご時世、入れる保育園を探すことも一苦労。どんなに不満があっても、今の園を退園するわけにはいかないと諦めていませんか? でも、できることなら、子どもを安心して預けるために、不満や不安はスッキリ解消したいですよね。今回は、そんなお悩みを解決する3つのポイントをお伝えします。園や担任保育者との信頼関係を壊さず、問題解決するための方法です。

 

「ついイラっとして」は後悔のもと

筆者は、子育てに活かせるアンガーマネジメントについて各地で講演しています。その中で、「ついイラっとして」その場の勢いで言動し、あとで後悔したという保育者や保護者のお悩み相談を何度も受けてきました。

実は、この「ついイラっとして」考えなしに言葉を発したり、行動したりすることで物事がスッキリ解決することはほとんどないといえます。“考えなしに”というのは、反射的に、衝動的に感情に流されて反応してしまうイメージです。

大切なのは、園や担任と信頼関係を壊さず、かつ、自分の要求を満たしてもらう目的を優先することです。つまり、感情的に言動するのではなく理性的に言動することが大事です。とはいえ、感情をコントロールし、理性を保つことはなかなか難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。

 

ポイント1.怒りをぶつける前の6秒間

ここで、1つめのポイント「6秒間待つ」にチャレンジすると、自分の理性を取り戻すことができます。たったの6秒で構いません。日本アンガーマネジメント協会によれば、イラっとした後、6秒だけ時間を空けることで、人の脳は冷静な状態に戻ると言われています。

アンガーマネジメントには、「6秒待つ」方法として衝動をコントロールするテクニックが様々あります。例えば、頭の中で1~6まで数える。100から3ずつ引いていくなどのカウントバック。ゆっくり深呼吸を3回ほど行う呼吸リラクゼーション。事前に自分の心を落ち着かせる魔法の呪文を考えておくコーピングマントラなどが代表的です。

これらテクニックを使うときに忘れてはならないのが、「理性を取り戻すための時間」の意識です。今後は、怒りをぶつける前の6秒間に意識を向けてみてください。

 

ポイント2.自分のために和解を選ぶ

落ち着くことができれば、「和解するための方法」を考えましょう。これが2つめのポイントです。関係を破壊してしまうと、今後、親子共に居心地の悪い環境で過ごさなければなりません。でも、感情的な状態を理性的に戻すことができれば思考力が働くようになります。そこで、親子共に園で快適に過ごすために、「どうしたいのか」「どうしてほしいのか」を考えることができるようになるのです。担任を責めて怒りをぶつけるのではなく、自分の要求を整理してみましょう。

保育者経験のある筆者の立場から言えば、怒り感情を前面に押し出している保護者より、話し合いのスタンスで苦情を言う保護者の方が、向き合いやすいのが正直なところです。同じ内容の要求だとしても、冷静に話す方がお互いにとって建設的な解決方法が見つかりやすいものです。退園を望まないのであれば、その環境をできるだけ快適にするための和解案を考えてみてください。

 

ポイント3.あなたが納得できる着地点

3つめのポイントは、「交渉する」です。和解のスタンスで、自分の要求を通すための交渉をしてみましょう。交渉の確率が上がる方法として覚えておいてほしいのが、「リクエスト言葉」です。「私は、○○なので、○○してもらえませんか?」のフォーマットに当てはめて言葉を作ってみましょう。

例えば、「私は急いでいるのに、なぜ、先生はすぐに子どもを受けてくれないんですか!」ではなく、「私は急いでいるので、早めに子どもを抱き取ってくれませんか?」。「どうしてケガをさせたんですか! かすり傷だからいいと思っているんですか!」ではなく、「私は小さなケガだとしても心配なので、安全に保育できる環境を整えてもらえませんか?」という具合です。

苦情とは不平不満を表している言葉です。苦情を受ける側は、苦情を苦情のまま伝えられるより、不平不満の解決法を提案される方が、要求が明確になるので対応しやすくなります。迅速に解決したい問題であれば、自分の要求を明確にして伝える方が上手くいきます。ただ、注意したいのは必ずしもすべての要求が通るわけではないことも知っておきましょう。園から伝えられた理由が納得できるものであれば、解決策の代替え案を考え、あなたが納得できる着地点を見つけられるまで交渉すればよいのです。

 

まとめ

これら3つのポイントを実践することで、苦情が苦情ではなくなります。あなたが大切にしてほしいこと、今後気を付けてほしいことに注目することは、保育者を責める行為ではなく、保育の問題を解決する方法に重きを置くことになるからです。

あなたの勇気ある行動は、保育者を成長させ、園の質を上げることにつながります。信頼を壊さず、言いたいことを言える関係は安心安全な環境です。保護者も保育者も願いは同じです。子どもの健やかな成長を互いに喜び合いながら過ごしていきたいものですね。

[執筆:野村 恵里(子育て・保育専門研修講師)]

※画像:CORA / PIXTA(画像はイメージです)

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