コロナ禍になり、マスクをつける日常生活が2年以上続いています。少しずつ脱マスクの方向に向かっていますが、もうマスクなしでは外に出られないという人も出てきました。マスクに依存することの弊害と効果的な利用方法を心理カウンセラーがお伝えします。
マスクをつけることのメリット
コロナ禍でほとんどの人が日常的にマスクをつけることになり、マスクはもう下着のようなもの、そう「顔パンツ」と言われるくらいになっています。そして多くの人がマスクをつけることのメリットを知ってしまいました。そのメリットとは主に、以下のとおりです。
・ウイルスや花粉の侵入予防
・飛沫の防止
・ラクができる(化粧、ひげそり、口臭など)
・美容効果(小顔、血色アップなど)
・不安軽減(容姿、対人関係など)
また、最近のマスクはおしゃれなものも多く、ファッションアイテムのひとつにもなってきました。
マスクを利用したい心理
コロナ禍が落ち着いてくると、ウイルスの侵入や飛沫防止のためにマスクが外せないという人は減ってきます。しかし、マスクをつけることで毎日の化粧やひげそりなどをしなくていいラクさを覚えてしまい、また以前のような状態は面倒だなと思って外せないという人もいます。
またマスクでおしゃれを楽しみたいという人もいます。これらの人たちは、世の中の状態が徐々に変化して行くに従って、柔軟に対応していけるので、それほど大きな問題にはなりにくいでしょう。
マスクを外せない心理
一方で、マスクを生活の中で利用しようとするのではなく、マスクを外せなくなった人もいます。
マスクは顔の3分の2が隠れます。人間はその隠れた部分を自分の都合のいいように脳内で補完していきます。この現象を「アモーダル補完」といいます。相手がマスクを外したとき、「あれっ想像していた顔と違った」と思ったことありませんか? 自分もそう思われるかもしれないと思うと、マスクを外せなくなっていきます。マスクを外して傷つくことを言われた経験があれば、さらに依存度は増していきます。
またもともと内向的な性格で、自分の容姿にコンプレックスを持っていたり、人と話すことが苦手で緊張しすぎる人などは、マスクをつけることで表情を隠し、心の中を読み取られないようにする心理的な防御壁になっています。だからマスクをつけることで外にも出られ、恐る恐るですが人と接することも可能になっています。
マスクは心理的安心感と人との距離感を守ってくれるものなので、マスクを外すことは無防備な自分をさらけ出すことになり、マスクが外せなくなるのです。
マスク依存の抜け出し方
マスク依存症は実はコロナ前から存在していました。容姿にコンプレックスがあったり、対人面で過度に緊張してしまう人にとっては、マスクは心理的な防衛壁として一定の効果があり、マスクに依存していました。ところがコロナ禍でマスク依存症の人がさらに増えています。何かに依存しなければいけない心理は、自己肯定感を低めてしまいます。
マスクに頼らず生活でき、人と円滑なコミュニケーションができるようにしていきたいですね。ではどうやってマスク依存から抜け出すことができるのでしょうか。
マスクは必ず外さなければならないというわけではありません。いつもは言いたいことが言えない自分が、マスクをつけることで言えるようになることがあります。キャラを変身させられるアイテムがマスクです。また苦手な人の前でもマスクをつけることで心理的距離を取ることができ、関係を悪くせずにすむこともあります。そういうメリットがある場面では、無理に外さなくてもいいでしょう。
ただ、マスクに依存するのではなく、マスクを上手く利用できる着脱可能な心理状態にしておくことが大事になります。そのために少しずつマスクを外す練習をしていきます。
家族やコロナ以前からの親しい友達の前で外す。
食事や誰もいない外を歩くときなどに外す。
職場や学校で5分外し、少しずつ時間を伸ばしていく。
このように、人、場所、時間を考えながら、自分が続けやすい方法で行ってください。
日常生活に支障が出ている場合は
容姿のコンプレックスを持っている人は、化粧、エステ、整形など外側からの方法で克服することができるかもしれません。しかし実は、容姿の問題ではなく、心の問題が隠れていることが多いのです。ひとりで解決するのが不安なときは、私のような心理カウンセラーなど専門家にご相談ください。またマスク依存症の人の中には、社交不安障害など何らかの不安障害の病気の可能性もあります。日常生活に支障がでて辛い状態であれば、メンタルクリニックや精神科、心療内科への受診をおすすめします。
[執筆:上土井 好子(公認心理師・心理カウンセラー)]
※画像:TOYOTA / PIXTA(画像はイメージです)