「うちの子どもは文章問題の読み取りが苦手…」と悩んでいる保護者の方は必見です。実は、国語の文章問題で心情を読み取る力をつけるは、幼少期からの保護者のかかわりが大切なのです。と言っても、特別に難しいことをする必要はありません。特別な資格も必要ありません。ただ子どもと一緒に遊ぶだけでOK。今回は感情保育学研修所がお勧めする家庭でできる簡単ことば遊びを紹介します。
国語力の低下に影響しているのは?
少年犯罪から虐待家庭、不登校、引きこもりまで、現代の子どもたちが直面する様々な問題を取材してこられたルポライターの石井光太氏は、『文春オンライン』の記事内で、子どもの「言葉の脆弱性」を問題視しています(※1)。
ボキャブラリーの乏しさによって自分の感情をうまく言語化できない、論理的な思考ができない、双方の話し合いができないなどによって引き起こされる生きづらさが子どもの問題を引き起こしており、それが今、子どもの国語力の低下につながっていると言われています。
「ヤバイ」の意味は?
子どもたちが自分の気持ちを表すときに使う言葉として、筆者が一番に思い浮かべる言葉は「ヤバイ」です。この言葉は非常に便利です。嬉しいときも、悲しいときも、怖いときも、美味しいときも、しんどいときも、あらゆる気持ちが「ヤバイ」で表現できるからです。でも逆に、どうとでもとれる言葉でもあるので、勘違いされやすい言葉であると言えます。つまり、好意的な意味で使った「ヤバイ」は、言われた側の受け止め方で悪意的な意味にとられてしまう可能性があるのです。他人が使う「ヤバイ」の本当の意味は、どういう気持ちから発せられているのか、正しく判断するのは至難の業なのです。
感情を表す言葉は必要な理由
だからこそ、自分の気持ちを表現するボキャブラリーを増やすことはとても大切なのです。「ヤバイ」を使う機会が多いとしても、その言葉にどのような気持ちが含まれているのかを自分の気持ちを添えて話せれば、気持ちが間違って伝わることは減ってきます。子どものうちから、たくさんの気持ちを表す言葉数を増やしておけば、コミュニケーションをとるときも、文章問題で心情を読み解く問題が出たときも、人の気持ちが理解できる力につながるはずです。
子どもの情操教育に役立つ簡単な言葉遊び
そこで、今回は子どもの感情を表す言葉を増やす遊びを紹介します。言葉の意味と感情のイメージを膨らませ楽しみながら学べます。数人で遊ぶことで同じ言葉を使っても、感じ方は人それぞれ違うことにも気づけるでしょう。
遊び方
「Aと言ったらB」「Bと言ったらA」と言う、フレーズをくり返しながら遊びを進めていきます。そのとき、Aには「モノ・コト」をいれ、Bには、「気持ち」を表す言葉を入れていきます。例えば、「いちごと言ったら美味しい」「美味しいと言ったら焼肉」「焼肉と言ったら嬉しい」「嬉しいと言ったらパーティー」「パーティーと言ったらウキウキ」「ウキウキと言ったら旅行」「旅行と言ったら感動」… という具合にです。
そして、できるだけ言葉数を増やしたいので、一度使った感情の言葉は使わないようにしてみましょう。ちなみに、感情を表す言葉(楽しい、怖い、寒い、悔しいなど)のほかに気持ちを表す状態のことば(お腹がすいた、気持ちがいい、頭に血が上るなど)でもOK。そのほかにもオノマトペ(ドキドキ、ハラハラ、モジモジなど)で表される感情も使うと言葉の幅が広がるので盛り上がります。
遊びの効果
日本語には感情を表す言葉が約4千語あると言われています。たくさんの言葉の中で、その「コト・モノ」をイメージしたときにピッタリの気持ちを探せられるようになれば、普段の生活でも、感情豊かな会話を楽しめるようになります。それが、自分の気持ちの理解につながり、人の気持ちに寄り添ったかかわりができるコミュニケーション力につながります。
さらに、遊びを通して様々な感情語があることを学べられれば、自分で自分の気持ちの整理ができるようになります。イライラしたとき、モヤモヤしたとき、それを言葉にして相手に伝えられるようになるのです。相手に伝えて、わかってもらえる経験をすれば、怒りの感情を爆発させる必要がなくなります。つまり、怒りを上手に扱えるようになれるのです。これは、ただの言葉あそびではなく、子どもの感情コントロール力の基礎を身につけるトレーニングにもなるのです。
まとめ
今日紹介したあそびは、いつでもどこでもできるあそびです。準備物もいりません。お風呂タイムや車、電車の移動中など、ほんの少しの隙間時間にも楽しめる簡単なあそびです。毎日忙しく過ごしている今だからこそ、隙間時間を活用して、子どもと向き合いながら言葉遊びを楽しんでみてください。子どもの国語力が上がることに加え、あなたの子育てもきっと楽になるはずですよ。
[執筆:野村 恵里(子育て・保育専門研修講師)]
【註】
※1. 石井 光太、『文春オンライン』「『ごんぎつね』の読めない小学生たち、恐喝を認識できない女子生徒……石井光太が語る〈いま学校で起こっている〉国語力崩壊の惨状」 (2022年7月30日)より
※画像 : momoirorenjya / PIXTA(画像はイメージです)