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子どもを上手に叱るには? 良い叱り方・悪い叱り方
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子どもを上手に叱るには? 良い叱り方・悪い叱り方

子育てをしていると、子どもを叱ることは避けて通れないものです。もちろん褒めて育てることは大事ですが、褒めてばかりでは物の善悪を教えることが難しい場合もあるでしょう。上手に叱ることが大切だと分かってはいても、実際には、なかなか上手に叱れないと悩む保護者も多いようです。そこで、今回は子どもを上手に叱るときのポイントと、注意してほしい悪い叱り方のポイントをお伝えします。

 

■そもそも叱るってどういうこと?

叱ることは怒ることです。筆者は、日本アンガーマネジメント協会のアンガーマネジメント叱り方トレーナーとして、保育、子育てにおける叱り方の研修会の講師として登壇しているのですが、「叱ることと怒ることは別ではないですか?」と質問を受けることがあります。そんなとき、「叱ることと怒ることの目的は同じなので、分けて考える必要はないですよ」とお答えしています。叱ることも怒ることも、目的は「伝える」ことです。何について怒っているのか、どういう理由で、どういう気持ちで、今後どう解決してほしいのか、これらを相手に伝えることが、叱ることと怒ることの目的なのです。

では、どうすれば上手に伝えられる叱り方ができるのか1つずつ紹介していきましょう。

 

■上手な叱り方1「基準」

まず1つ目は、基準を明確にすることです。基準が明確になれば、子どもは叱られている理由が理解できるからです。また、叱るときの基準が、相手にとって納得できる内容かも大切です。誰だって、自分が納得いかないことには反発したくなるものです。親の一方的な要求の押付けになっていないかを相手に確認しましょう。

 

■上手な叱り方2「提案」

叱ることを親のストレス発散にしてはいけません。問題解決のために行う行為です。子どもの年齢に合わせて、解決方法を提案したり、子どもに考えてもらったりすることで叱る効果が上がります。そのとき大切なのが、内容を具体的な言葉にして相手がイメージできる提案にすることです。

 

■上手な叱り方3「表現」

叱っているとつい口調が強くなったり、態度が横柄になったりするものです。でも、ここはぐっと堪えて大人になりましょう。せっかく基準を明確にして、提案したとしても威圧的な態度だと相手は委縮してしまいます。責められていると感じれば、聞く耳を持てず言い訳をし始めたりするでしょう。ここでは、態度や言葉使いに配慮し、穏当な表現をするようにしましょう。

 

■無駄に叱るとどうなる?

アンガーマネジメントでは、叱ることも怒ることも悪いことではないと考えます。ただ、叱ることはとてもエネルギーを必要とする行為です。無駄に叱っていると、エネルギー不足に陥り疲れがたまって余計にイライラしてしまいます。さらに、叱られる側はその強いエネルギーを、常時浴び続ける環境で慢性的にストレスを感じる状態になり、ビクビクしながらの生活で親への信頼感が下がります。無駄に叱れば互いにネガティブな影響を受けやすくなるので、上手に叱ることは大切です。

次に、今後、上手に叱るために注意したい8つのポイントを「悪い叱り方」紹介しておきます。

 

■悪い叱り方1「機嫌で叱る」

親の機嫌の良し悪しで叱られると、なぜ叱られているかの理由が理解できません。また、叱る基準がその時々で変わると、本当に叱らなければならないときに大切なことが伝わらなくなります。大事なのは、互いに納得し合っている一定の基準で叱ることがポイントです。

 

■悪い叱り方2「人格攻撃」

努力しても変えようがない人格や元々持ち合わせている能力、性格を否定したり、親の思い込みによって事実を確認せず叱ってしまうと、不信感を募らせ、反発心を抱いてしまいます。この場合、何を改善したらよいのか分からないため、自己否定したり、自己肯定感を傷つけたりする可能性があります。注目するのは事実、結果、行動、行為、ふるまいなど、叱ることで改善可能なことに対してだけにしましょう。

 

■悪い叱り方3「人前で叱る」

公衆の面前や兄弟姉妹の前など、見せしめ的な叱り方をすると、周りが気になり叱られている内容が伝わりづらくなります。叱るときは、その瞬間その場で叱ることも大切ですが場所を移動するなど工夫して1対1でじっくり話ができる環境を作りましょう。

 

■悪い叱り方4「感情をぶつける」

イライラや怒りの感情を相手にぶつけても問題は解決しません。怒りの感情はエネルギーが強いので、伝えたい内容が感情に打ち消されてしまいます。大事なのは、叱っている理由や気持ち、今後、問題をどう解決してほしいのかなどを言葉にして伝える提案です。

 

■悪い叱り方5「過去を持ち出す言葉」

「あのときは~」「また同じことをして~」と過去を持ち出して叱るのはNGです。今、叱らなければならないことを1つに絞ることで内容がボヤけず、伝えたいことが伝わります。過去に叱ったことをくり返しているなら、自分の叱り方を振り返り、変えていく必要があります。

 

■悪い叱り方6「責める言葉」

「なんで」「どうして」など、原因を責めるだけでは問題は解決しません。親子関係においては、「次から~してみてはどう?」「今度は、~してみよう」など、未来に向けてどう行動を変えたらいいのかを言葉にして伝えるようにしましょう。

 

■悪い叱り方7「強い言葉」

「いつも」「絶対」は、子育てで使いがちな言葉ですが、それは本当に100%「いつも」「絶対」なのでしょうか? 100回のうち1回でもできていれば100%ではありません。屁理屈かもしれませんが(笑)、子どもは案外そういうところは鋭いもので「いつもじゃない!」と反発してきたりします。決めつけた言葉は使わず、目の前の事実にフォーカスすると上手に叱ることができます。

 

■悪い叱り方8「程度言葉」

曖昧な言葉を使ってしまうと、親子間でその程度具合にズレが生じてしまいます。「ちゃんと・しっかり・きちんと」は、要注意言葉です。程度言葉を具体的言葉に変えることで、そのちゃんと具合、しっかり具合、きちんと具合が明確になり理解できます。親も「この状態がOK」を具体的にイメージしてから言葉にすることで、伝わる叱り方ができるようになるでしょう。

 

■まとめ

叱ることは子育てに重要な行為です。重要だからこそ、上手に叱ることが大切です。今回紹介した叱り方のポイントを意識しながら、「叱るセリフ作り」をすることで親子関係を壊すことは無くなります。初めは難しいかもしれませんが、できることから一つずつ試していくうちに、意識しなくても自然に上手な叱り方ができるようになります。我が家の子育てでは、私自身が意識しながら実践してきたことで、現在高校3年生、中学2年生の息子2人と快適な親子関係を築けています。自信をもってお勧めする叱り方です。ぜひ、試してみてくださいね。

[執筆:野村 恵里(子育て・保育専門研修講師)]

※画像 : JackF / PIXTA(画像はイメージです)

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