職場や友達関係の人間関係は自分にとっては他人との関係で、比較的距離も取りやすく、またいざとなれば切ることができる関係です。しかし家族となるとより自分と近い関係になり、それゆえ関係が複雑化し悩みも深くなります。
そのような家族間で、折り合いが悪い家族の間に入り板挟み状態になることがあります。折り合いが悪い家族の間に入ってしまう心理と対処法を心理カウンセラーの筆者がお伝えします。
折り合いが悪くなるのはどんな関係の人?
家族間での板挟みで疲れてしまう関係はとてもたくさんあります。折り合いが悪くなる関係は、夫(妻)と実父(母)や義父母との間、親と祖父母との間、父親と母親の間、親ときょうだいとの間、また親戚まで範囲を広めるとさらに様々なパターンがあります。折り合いが悪い関係の仲裁役になる場合や、不穏な空気を察知し良好な関係を保つため先回りして間に入る場合もあります。本人がその役割を買って出ることもありますが、家族の間でその役割を引き受けざるを得ない状態になることもあります。
間に入る人が必要になる理由
自分がいつも正しいと思ってそれを曲げない人がいると、それに反発する人や、ずっと言いなりになる人が出てきます。反発する人との間では険悪な雰囲気になります。こういった場合は、誰かがその場を収めなければならなくなります。
ずっと言いなりになっている人との間では、表面的には問題なさそうに見えますが、ずっと言いなりになるタイプの人は自分が悪者になりたくない気持ちがあり我慢しています。そしてどんどんストレスを溜め込み、別のところでストレス発散しようとします。そのストレスのはけ口になってくれ、自分の味方になってくれる人を求めるのです。また、相手の立場をまったく考えず好き勝手に行動する人がいると、いつも誰かが不満を持ちます。家族がまとまるためにも、その不満を解消してくれる人が必要になります。
間に入ってしまう人の特徴
折り合いが悪い家族間でいつも間に入り板挟み状態になる人は、共感力がとても高い特徴があります。客観的に物事を見る力もありますが、それゆえに両方の気持ちもわかるのです。そして優しく平和主義なところがあり、どちらも傷つかないよう穏便に解決する方法を常に探しています。また責任感が強いので、病弱な家族やパワーバランスの弱い方を見捨てることができず、自分から間に入る役割を担おうとします。
こういうタイプの人は、家族間の微妙なバランスもわかっていて、自分がいることでなんとかバランスを保っていると思っています。このことは他の家族の人も無意識にわかっています。家族が間に入る人に頼り甘えることで、折り合いの悪い二人は自分たちの問題に目を向けずにすんでいるのです。そうなることで、ますます間に入ってくれる人への依存が強くなり共依存関係になります。また反対に平和主義なところが強く出ると、目の前の人の機嫌だけを取ろうとし、優柔不断な態度になります。面倒くさいことに巻き込まれたくないので、根本的な解決への行動はとりません。しかし両方からのストレスのはけ口になることで、かなりストレスが溜まっていきます。
折り合いの悪い家族の間に入らないという選択
折り合いが悪い家族の間に一度入ると、その関係は固定されやすくなります。初めは家族の関係をよくするために頑張れても、気がつけば自分ばかりが誰かのために奔走し報われない役回りになっていることに気づきます。これはいつも他者を優先して、自分がずっと我慢している状態です。人は我慢をし続けると壊れてしまいます。本人は、自分が家族の間に入り我慢をすることで、家族が変わってくれるのをどこかで期待しているのかもしれません。しかしどれほど我慢をし続けても家族は変わりません。問題があるのであれば、当事者に問題を返し、家族の間に入る役目を下りる選択もあるのです。
そして自分の中にある「家族をどうにかしよう」という思いをいったん外しましょう。自分の人生は自分が責任を取らなければなりません。だからまず自分の人生を優先的に考えてください。家族の中で自分が脇役になるのではなく、自分の人生の中では家族は脇役でしかないのです。家族とは負担のない距離感でつきあい、自分に余裕を持つことが最も大切なことです。
[執筆:上土井 好子(公認心理師・心理カウンセラー)]
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