Close
「やりたいこと」が見つからない…迷子にならないために
Home » 健康・メンタルケア » 「やりたいこと」が見つからない…迷子にならないために

「やりたいこと」が見つからない…迷子にならないために

今の仕事が「やりたいこと」かと聞かれれば、胸を張って「そうです」とは言えない。かといって、自分が本当に「やりたいこと」はこれだとはっきりと見えてこない。そういう人も多いのではないでしょうか。そして「やりたいこと」がわからなくて、やりたいこと探しで彷徨っていませんか? 「やりたいこと」を探すときに陥りやすい心理と注意点を心理カウンセラーがお伝えします。

1.「やりたいこと」にこだわる心理

今はSNSなどの普及で、見ず知らずの人のことを簡単に知ることができます。起業して成功した人や、やりたいことを仕事にして充実している人を見てしまうと、日々味気ない生活をしている自分はこれでいいのかと迷います。「やりたいこと」さえ見つかれば、すべての心の霧が晴れ、充実した日々と自信みなぎる自分がすぐそこにいる気がしてきます。「やりたいこと」が見つからない状態は、自分の可能性を探しきれていないもどかしさや、社会人として失格なのではという不安が出てきます。「やりたいこと」というパワーワードが現状の不満をすべて解決してくれると思い込み、「やりたいこと」探しに奔走してしまいます。

2.「やりたくないこと」にこだわる心理

人は誰でも、間違った道に進んで後悔したくない。だからこそ、早く「やりたいこと」を見つけて、それに情熱を傾け突き進みたいと考えます。しかし「やりたいこと」がすぐに見つかる人は少ないように見えます。そのようなときは、「やりたくないこと」から考えてみる方法もあります。自分が「やりたくないこと」を出していくと、本当は何がやりたいのかが見えてくることも。ただし、「やりたくないこと」を「したくない」と完全に拒否してしまうと、「やりたいこと」から遠ざかることもあるのです。

「やりたいこと」を仕事にしても、「やりたくないこと」をしなければならないときもあります。そのときに、「やりたくないことは、したくない」と頑なになれば、「やりたくないことは誰からもやらされたくない」となります。そこに上司に言われて渋々やらされたとなると、一気に仕事も人間関係も嫌になってしまいます。

「やりたくないこと」にこだわりすぎると、やりたいことだけの仕事とそれを尊重してくれる人間関係を求めてしまい、なかなか現実の社会では上手くいきません。キャリアを積む前に、「やりたいこと」を探し求めて彷徨ってしまいます。「やりたくないこと」の中にも自分の意外な可能性が見つかることもあります。「やりたくないこと」にこだわりすぎず、柔軟性も身につけるようにしましょう。

 

3.「やりたいこと」の理想と本音

「やりたいこと」を考えるとき、ちょっと背伸びをしてしまうことがあります。自分の得意なものや強みは何か、そしてそれで人に何を与えられるか、社会にどう貢献できるかと大きく考えます。自分の使命は何か、ミッションは何か、どういうビジョンを持っているかと自分に問うのです。志を高くし社会に貢献しながら仕事をしている人を見ると、自分もあの人のようになりたいと思います。

しかし心のどこかで、自分に同じことができるだろうか、才能はあるだろうか、成功するだろうかという不安もあります。そしてもっと奥には本音も隠れています。たとえば、時間や人に縛られず、好きなときにゲームができて、お金には困らない。自慢できる恋人がいて、友達とも楽しく遊び、たまに仕事で達成感があったらいいな、という本音かもしれません。

こんな都合のいいワガママなこと考えるなんて、と思われたかもしれません。ですが案外、人はこのような自分に都合のいい本音があります。「こんな自分はダメだ」と排除するタイプの人は、理想のなりたい姿を自分にずっと言い続け、それがあたかも本音であるように自分を駆り立てます。理想の「やりたいこと」に絡み取られると、自分を常に駆り立てて目標を追うことが人生そのものになってしまいます。燃え尽き症候群になる人も多いのです。

 

4.自分に合った仕事の探し方

自分に合った仕事を考えるとき、自分の「やりたいこと」を考えますが、「やりたいこと」とは単に現時点の自分の「やりたいこと」に他なりません。やりたいと思っていたことでも、思っていたものと違ったというのはよく聞く話です。

現時点の自己分析でも、適性と興味は客観的に捉えておきたいところです。今はいろんなツールがあります。「やりたくないこと」でもやらなければならないときがあるといいましたが、その比重が高ければ、やはり続けていくのは困難です。適性と興味を知り、「やりたくないこと」が少ないものに絞っていくと、自分に合った仕事を探していけます。

また全く興味がないものは、仕事をしていく中で自分がやっていることに疑問を持ちやすくなり、真剣に取り組めず、覚えようという意欲に欠けてしまいます。そうなると他者からの評価も低くなり、「自分には能力がない」という間違った自己概念を持ってしまいます。興味は全体でなくても部分的なものでも構わないので、自分がどんなモノやコトに興味があるのかを知っておくといいでしょう。

[執筆:上土井 好子(公認心理師・心理カウンセラー)]

※画像:PIXTA(画像はイメージです)

Close