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秋から気分が落ち込む…「冬季うつ病」の特徴と対処法
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秋から気分が落ち込む…「冬季うつ病」の特徴と対処法

毎年10月くらいから、なんとなく気分が落ち込むことはありませんか? いつものことだから仕方ないと諦めないでください。それは「冬季うつ病」かも知れません。でも心配しないで! 冬季うつ病は予防や改善ができると言われています。冬季うつ病の特徴と、どのように対処していけば良いのかを心理カウンセラーである筆者がお伝えします。

 

冬季うつ病とは

DSM-5(アメリカの精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)によると、冬季うつ病は「特定不能の抑うつ障害、季節型」に分類され、季節性感情障害などと呼ばれたりします。(ただし診断に際しては詳しい診断基準が設けられています。)毎年繰り返しやすく、比較的女性に多いと言われていますが、男性にも見られます。

 

冬季うつ病の特徴とは

冬季うつ病は10月くらいから症状が出始める人が多くなります。特徴的な症状は以下のとおりです。

・気分が落ち込み、自己否定的になる
・過眠(朝も眠くて起きられない、日中もずっと眠い)
・過食・体重増加(白米や菓子パン、パスタなど炭水化物やチョコなどの甘い物、特に夕方から夜に食べたくなる)
・疲れやすく、集中力がない、倦怠感が強い
・今まで楽しんでいたことも楽しめない、人と会いたくなくなる

ただし、春になると回復していきます。そしてまた秋になると症状が出てくるということを繰り返します。

 

冬季うつ病の予防と対処法

冬季うつ病は、日照時間が深く関係していると言われています。人は太陽の光を浴びると、目から脳に信号が伝わり、神経伝達物質のセロトニンが作られます。セロトニンは精神の安定やストレスの軽減に作用します。しかし秋から冬にかけて日照時間が短くなるとセロトニンが不足し、悲観的な考え方に偏よります。また日照時間が少なくなるとメラトニンという睡眠に関係するホルモンの調節がうまくいかず、睡眠障害を起こしやすくなります。冬季うつ病を予防するためにも、意識して太陽の光を取り入れていきましょう。朝はカーテンを開け日光を浴びます。日中は少しの時間でもいいので積極的に太陽の光を浴びるようにします。また室内で自然光を取り入れることが無理な場合は、照明は明るめにしておきましょう。

秋から冬にかけて炭水化物や甘い物が強烈に欲しくなりますが、これらは冬季うつ病の症状として捉えてください。そしてセロトニンの合成に欠かせないタンパク質のトリプトファンを積極的に取り入れましょう。トリプトファンは肉、魚、大豆、乳製品、ナッツ類、バナナなどに含まれます。ミネラルやビタミンなどもバランス良く取り入れ、偏りのない食事を心がけてください。そして負担にならない程度の、軽めの運動も取り入れましょう。規則正しいリズムで日常を送ることは、予防や症状改善にとても大切です。また症状が重い場合は、薬物療法や高照度光療法などもあります。

 

冬季うつ病を悪化させないために

秋になると日の入りがどんどん早くなり、気持ちが暗くなったり、無性に焦ってきたりします。これは誰にでも起こるものですが、冬季うつ病になると、うまく気分転換ができずに、そういうネガティブな気持ちをいつまでも引きずります。気分が落ち込むとどうしても外出や人を避けたくなります。落ち込んだ気持ちをひとりで抱え込むと、無価値感や孤独感、自己否定感が強くなり、そのせいでまた引きこもるという悪循環にはまります。

しかし冬季うつ病は、春になると回復していくものなので、終わりが見えているものです。年によって程度の差はありますが、同じ時期に繰り返されるので、あらかじめ悪化時期が把握できます。そういった客観的な視点を取り戻し、焦らず早めのケアをしていきましょう。

また秋から冬は、ハロウィンやクリスマス、忘年会、お正月など、大きなイベントが続きます。これらは楽しいイベントですが、人によっては大きな悩みの種になっていることもあるでしょう。自分を抑えてまわりに合わせていると知らない間に疲れが溜まります。この時期に疲れを溜めると、春先の回復が遅れます。自分の体調を把握し、無理のない計画を立てましょう。自分の心身の状態を客観的に把握し、自分を優先的に考えるいい機会にもなりますよ。

ただし、症状がどんどん重くなったり、季節に関係なく心身の不調がある場合は、他の疾患の可能性もあります。一度医療機関に受診されることをおすすめします。

[執筆:上土井 好子(公認心理師・心理カウンセラー)]

※画像:PIXTA(画像は本文とは直接関係ありません)

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