自分なりに頑張って努力しているつもりでも、仕事で同じ失敗をしたり、人間関係でいつも最後は上手くいかなくなったりすると、自分の能力や性格のせいにして諦めていませんか? ちょっと待って! その頑張りの方向を少し変えることで解決できるかもしれません。どのように頑張りの方向を変えていったらいいのかを、心理カウンセラーの筆者からお伝えします。
1.自己修正力
仕事で失敗をしたときは怒られて落ち込むし、まわりの人の手前恥ずかしいし、自分自身もなんでこんなことしてしまったんだと情けなく思います。程度の差はありますが、誰でもこのような感情を抱きます。そこからすぐに前向きになり同じ失敗をしない人と、落ち込んでいつまでもウジウジする人との、大きな違いは、「自己修正力」にあります。
「自己修正力」とは、問題点や間違いや不十分なところを見つけ出し、正しく直していく力です。そしてこの「自己修正力」の基礎となるのが、自分のミスを自分で受け入れられているかになります。前者の人は、失敗自体を客観的に把握しているのに対し、後者の人は、失敗の本質ではなく失敗をした自分を見たくなくて目をつぶり、自責感でいっぱいになっています。そして失敗などネガティブなことが起これば、自分自身の人間性に安易に結びつけ、自己否定をします。これらを修正していくポイントは、失敗した部分を具体的に絞って客観的に把握することです。
さらに「自己修正力」には二つあります。ひとつは新しく変化させて「改善」をしていく方法です。たとえば、仕事が完成するまで上司に報告にいかなかったことで失敗したとしたら、次回から6割くらいのところで一度現状報告に行ってみる修正の仕方です。もうひとつは、気が逸れたり集中できなかったりしたせいでの失敗だとしたら、気が逸れた段階で早く気づき「元に戻していく」方法を考える修正の仕方があります。
2.自己調整力
「自己調整力」とは、程よい状態にしたり、つりあいの取れた状態にする力を言います。仲のいい友達だと思ってたのに急によそよそしくなったとか、初対面の人なのにズカズカとプライベートにまで入ってくるなど、人との距離感で悩んでいる人は多いですよね。人との距離感のように、目に見えないもので一定していないものは、常に不安定です。だからこそ、人は変化のない状態を求めます。いつも同じ対応をしていたら同じ対応を返してくれるという思い込みがあると、少しの変化でも許せなくなったり、傷ついたりします。
「自己調整力」は、ある最終目標に到達する必要はなく、あくまで柔軟にその時その時の臨機応変さが必要になります。いつも元気いっぱい楽しく話をするのではなく、相手が少し元気ない感じだったら、「どうしたの? 何かあった?」と気遣ったり、そっとしてあげることも必要でしょう。その後また元気になったら、いつものように楽しくおしゃべりをするといった、動きのある距離感を調整していきましょう。
3.自己修整力
1で述べた「自己修正力」が問題点を正しく直すのに対し、「自己修整力」は良くないところを整えて直す力になります。職場の同僚や友達関係で、より仲良くなりたいのになれない人がいます。自分をうまく出せない、自分から話しかけるのは不安だからかもしれません。それは自分が相手からどう思われるかを気にしすぎる癖があるので、相手の話により興味を持つことで直していきます。
また仲良くしたいのに、何か距離を置かれているような感じであれば、自分を少し振り返ってみましょう。朝、家族とケンカして不機嫌なままで、不機嫌オーラで相手と接していませんか? 喜怒哀楽をお構いなしに出しては、相手も対応に疲れます。ネガティブな感情は自分でいったん切り替え、ある程度フラットな状態に整え直す力が大切になります。
「修正」「調整」「修整」するときの注意点
「自己修正力」「自己調整力」「自己修整力」をつけて、行動や考え方などを変えていくときは、必ず小さいところからやっていきます。自分を一気に変えたかったり、物事を大きく変化させたくなるかもしれません。しかし、大きく変えることはリスクも大きいですし、長続きしないというデメリットが出てきます。「微修正」「微調整」「微修整」が肝心です。例えば、メモの貼ってある位置を変えてみるだとか、幼稚園のお迎えのとき自分から挨拶をしてみる、人に会う前は笑顔を作ってから会うなど、ささやかなところから取りかかりましょう。すぐに結果を求めない、続けてみる、そしてトライ&エラー(試行錯誤)を身につければ、失敗も怖くなくなります。ぜひ「微修正」「微調整」「微修整」してみてくださいね。
[執筆:上土井 好子(公認心理師・心理カウンセラー)]
※画像:PIXTA(画像はイメージです)