昨年10月に話題となったマタハラ訴訟(妊娠を理由とする降格は原則違法だと最高裁が初めて判断したもの)で、がぜん注目されることになったマタニティハラスメント(以下、マタハラ)。マタハラとは、働く女性が妊娠・出産を理由に降格、解雇、契約打ち切りされることや、職場で受ける精神的・肉体的なハラスメントで、「セクハラ」「パワハラ」に並ぶ3大ハラスメントのひとつです。
■ マタハラの現状
日本労働組合連合会(以下、連合)によると、妊娠した女性の約4人に1人がマタハラにあっており、そのうち「心ないことを言われた」というものが約40%でトップを占め、解雇や自主退職への誘導以上に身近だということがわかります。
昨年のマタハラ訴訟でも、本人から軽減勤務希望が出されると「そんなことはできるわけがない」と拒否したり、「何を甘えたことを言っている」と突き放すような発言があったそうです。
■ どんな発言がマタハラに?
1. パワハラ系
「妊娠は病気じゃないんだから」 「気合いが足りないから具合が悪くなるんだよ」 「今の君に任せられる仕事がない」など、上司から発せられる言葉は間違いなくマタハラです。
2. イヤミ系
「産後も働きたいなんてわがままだ」 「残業するこっちの身にもなってくれ」「○○さんはそんなに休んでなかったよ」など、同僚からの嫌がらせです。
3. 無意識おせっかい系
「女の幸せも大事だよね」「最近太った?」「早く帰れていいなぁ」などは悪気があって言っているものではないパターンもありますが、個人の価値観によるものや相手の気持ちを考えずに発せられる言葉には注意が必要です。
■ 同性間でのマタハラ発言に注意!
連合のアンケートでは、マタハラがおこる原因は「男性上司の無理解」が66.1%と主流ですが、「女性上司・同僚の無理解」も38.6%にのぼっています。女性管理職が増えると、同性間でのやりとりにもさらに注意が必要になってくるでしょう。
「私のときは産休・育休すらなかったのよ」「私はつわりで苦しくても出社したのよ」などと、上司から経験談をされると何も言えなくなってしまうものです。
筆者の友人も、5歳年上の女性上司(DINKS)から理解を得られず苦しんでいました。晩婚・晩産化が進み、出産・育児に関わる経験や理解そのものが少ない女性も増えてきているのも事実、ハラスメントをしているという認識がないケースもあるようです。
いずれのケースも、言われるがまま泣き寝入りしてしまうのは危険。何より過酷な労働を重ねていれば流産や早産などにつながりかねません。できる限りのパフォーマンスをし、サポートしてくれる周囲へ感謝の気持ちを伝えているのなら、身体を最優先でマタハラに屈しない強い姿勢をとりたいものです。
[執筆:渡辺さちこ]
【参考】
※日本労働組合総連合「第2回 マタニティハラスメント(マタハラ)に関する意識調査」2014年6月
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