筆者がカウンセリングのご相談を受ける中で「他部署から異動してきた同僚とうまくいかない」というお話を伺うことがあります。何回かお話を伺う中で、ご相談者自身の「思い込み」により、その同僚の印象が歪んでしまっていることに気づくケースも少なくありません。相手に抱く印象には、自分の推測・憶測が大いに入り込んでしまうことがあり、そこで一度作られたイメージをなかなか払しょくできないことが、人間関係に影響を与えていることも。
ここでは、思い込みによる印象のゆがみについて、代表的なものをご紹介します。
■ 「初頭効果」
人物紹介の時に、最初に聞いた言葉で大まかな印象を決めてしまうことはないでしょうか。これを「初頭効果」と呼びます。
同じAさんを紹介する際に、
(1)「知的で、勤勉で、衝動的で、批判的で、頑固で、嫉妬深い人」と言われた場合
(2)「嫉妬深く、頑固で、批判的で、衝動的で、勤勉で、知的な人」と言われた場合
印象が変わってきませんか?
(1)では、「欠点はあるけれど、能力は高い」と評価される傾向にありますが、(2)の場合は「能力はあるが欠点が多い」と、あまり評価されない傾向が出やすいとされています。並べている単語は全く同じなのに、です。
何度も会っている相手でも、最初の印象が強烈なものとなることで、イメージが固定化されてしまうのです。
■ 「中心特性効果」
相手の特性がいくつかあった場合、その中で中心的でわかりやすい特性に注目し、その特性を基準に印象を作る傾向があるとされています。これを「中心特性効果」と呼びます(※1)。
たとえば、(1)「知的で、器用で、勤勉で、温かく、てきぱきしていて、慎重な人」のケースにおいて、「温かく」に注目すると、なんとなく「好意が持てる」という印象となるでしょう。
一方、(1)の「温かく」だけを「冷たく」に変えてみたらどうでしょうか? 他の5つの特性は変わっていないにも関わらず、なんとなく否定的な印象になる方も少なくないのではないでしょうか。
これまでの自身の経験やメディアなどから得られる情報をもとに、無意識に抱いているイメージを初対面の人に当てはめてしまうことがあるものです。これらの思い込みを引きずることはもったいないことも多いもの。人間関係、うまくいかないなあと思ったときは、ちょっとこれらの思い込みについても意識してみては?
[ 執筆:浅賀 桃子(メンタル心理・キャリアカウンセラー)]
【参考】
※1. 齊藤勇著 (2009)『イラストレート 人間関係の心理学』誠信書房,p24-25