「ヤマアラシのジレンマ」という言葉はご存知でしょうか。あるセミナーに参加した時に伺った、精神科医・樺沢紫苑先生の「心の距離感の保ち方」のお話が印象的だったのでご紹介します。
■心の距離感が近づきすぎると……
ヤマアラシは、近づきたくても近づけないジレンマを抱えていますが、人間も、適度な距離感を維持することが大切のようです。
「ヤマアラシ」というのは、全身にトゲがあるネズミ科の小動物のことです。全身にトゲがあるため、ヤマアラシはお互いに身を寄せ合うことができません。温め合おうと近づきすぎると、お互いの棘が刺さって、傷め合うことになるからです。そ
の切なさを表現して「ヤマアラシのジレンマ」と呼んでいます。
「ヤマアラシのジレンマ」は、哲学者ショーペンハウアーの寓話を元に、精神分析の創始者である心理学者フロイトが提唱した概念。離れすぎても近づきすぎても苦しく、人間関係には「適度な距離感」が重要だと唱えています。
これは夫婦関係にも当てはまります。
心の距離が遠すぎると「もっと自分のことをわかって! 近くに来て」と言いたくなりますが、近寄りすぎると、束縛感と自由を求めて「もっと離れて!」と言いたくなります。離れていたほうが相手のいいところがクローズアップされ、毎日一緒だと互いの短所や欠点にばかり目がいっていしまうという、なんともやっかいな関係なのです。
■結婚直後は「心の距離感」を探る時期
夫婦問題に特化したカウンセリングを行う筆者のもとには、結婚して間もないご夫婦からのご相談もあります。その多くが、些細な事が原因で口喧嘩に発展し、夫婦喧嘩がどんどんエスカレートしてしまうというもの。
結婚直後は、「心の距離感」を探っている時期なのだと思います。最初は、自分のことより相手のことでいっぱいで、気になって気になって仕方のない状態。つまり、互いの距離感が近すぎるのかもしれません。
そんな相談者さんには、「相手にばかり執着しないで」と伝えています。「適度な距離感」をとるのは、なかなか難しいところ。ですが、近づいたり離れたりしながら、互いの居心地のいい距離感を見つけていくしかありません。
■夫婦円満の秘訣は、互いを尊重し認めること
上述の樺沢先生も、「生まれも育ちも個々に違う別々な人間が、共に生きていくためには、互いの考え方を尊重し、プライベートな時間を認め、居心地のいい場所をつくること」と語っていました。
結婚のカタチに「こうでなければならない」という決まりはありません。相手をコントロールしようとすると、どうしても「束縛」となり、窮屈に感じてしまいます。
遠すぎず、近すぎず、適度な心の距離感を見つけること。それがいつまでも仲良く過ごす夫婦円満の秘訣といえそうです。
[執筆:渡辺 里佳(夫婦関係・離婚カウンセラー)]
【参考】
※ 執筆者:渡辺里佳(夫婦関係・離婚カウンセラー)について。女性専用のカウンセリングサービス『ボイスマルシェ』の登録カウンセラー。電話カウンセリングなので全国どこからでも利用できる、匿名で話せる、当日予約できるというボイスマルシェの特長を活かし、全国の女性たちの夫婦問題・離婚の相談にのっている。
※写真:PIXTA、本文とは関係ありません