■ 疲労時は、甘いものが一番と言うけれど……
クリスマスシーズン、または忘年会や新年会などでもスイーツを食べる機会がぐんと増える時期です。「ま、この時だけだからいいか」とか暮れの忙しさを乗り切る自分にご褒美など、様々な理由をつけてケーキをほおばる人も多いことでしょう。
昔から「疲れた時は甘いものを取るのがよい」と言われてきました。登山には体力消耗したときのためにチョコレートを携帯する、脳のエネルギー源はブドウ糖だけといった話を聞くにつけ、疲労時には甘いものが必要という説が定着しているようです。
■ スイーツは心を癒すのか?
確かに、スイーツは心身の疲れを癒してくれる力があります。甘いものを食べると幸せな気分になる人は多いでしょう。しかし、だからといってストレスや心の苦しみを解消するわけではなく、むしろ心のバランス調整には弊害となることもあります。
母娘関係改善カウンセラーの筆者のところには、母親のことで悩む20代、30代の女性が多く来られます。気になるのはクライアントの食生活と心の状態についての関係です。カウンセリングシートに体調や感情面に関する状況を記入して頂くことになっているのですが、食生活が乱れている人が増えており、さらにこうしたケースの多くが感情面でイライラすると訴えているのです。
母娘問題で悩むクライアントの中には、母親が料理をあまりしなかった家庭で育ち、栄養バランスを考えた食事の重要性について認識が低い人もいます。社会人になり独り暮らしを始め実家との行き来がほとんどない、仕事での人間関係がうまくいかないなどストレスがたまると、寂しさや苛立ちからつい甘いものを食べてしまう傾向があります。
スイーツを食べると一時的に慰められるような気がしますが、もともと栄養バランスが崩れている上に糖分を取り過ぎると、気分が不安定になりイライラにつながることもあるのです。栄養療法を実践している精神科医の佐藤安紀子氏は著書の中で、「栄養障害が進行した人には、必ず血糖の調節障害が伴います」と述べています(※)。
街を歩けば、いたるところで売られているクリスマスケーキに思わず目がいくのも理解はできますが、疲れている時、心と身体が要求しているのは甘いケーキではなく、栄養バランスのとれた料理と質のよい睡眠なのです。自分へのご褒美もいいけれどスイーツはほどほどに……。
[執筆:真香(母娘関係改善カウンセラー)]
【参考】
※ 佐藤安紀子(著), 溝口徹(監修)(2009)『精神科医の栄養療法―今日からすぐに実践できるメンタルケアのための栄養レッスン』BABジャパン