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誤解されやすいZ世代の特徴3つ、それ本当に発達障害?
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誤解されやすいZ世代の特徴3つ、それ本当に発達障害?

「同僚は、もしかして発達障害かも…?」Z世代の部下や同僚といい関係を築きたいのに、彼らとうまくコミュニケーションが取れないことが「発達障害かもしれない」という誤解を生んでいる可能性はありませんか? 自分とは違って見える彼らとどうつき合っていけばよいのかわからず、途方に暮れてはいないでしょうか。

この記事では、「ニューノーマル時代のパートナーシップ」をテーマに研究を重ねている筆者が、Z世代の若者たちとの関わりのなかで気づいた「発達障害」と誤解されがちな彼らの特徴を3つご紹介します。「発達障害」と「Z世代」の特徴と違いを知ることで、Z世代に対する誤解や決めつけはなくなり、これまでよりもいい関係を築いていけることでしょう。

 

発達障害ってなんだろう?

そもそも発達障害とはなんでしょうか? 名前は知っているという人もいるかもしれませんね。発達障害は、生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴のある状態です。厚生労働省『知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス』ウェブサイト(※1)によれば、発達障害には、自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群を含む)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害、チック症、吃音などがあり、それぞれの特徴は次のとおりです。

【自閉症スペクトラム】
人の表情や態度より、文字や図形、物に関心が強い。
見通しの立たない状況では不安が強く、見通しが立つ時はきっちりしている。
感覚刺激への敏感さがある。

【限局性学習障害】
「話す」「理解」はできるが「読む」「書く」「計算する」が、努力しているのに極端に苦手。

【注意欠如・多動性障害/ADHD】
次々と周囲のものに関心を持ち、周囲のペースよりもエネルギッシュに取り組むことが多い。

【チック症・吃音】
我慢していても声が出たり体が動いたりするチック症。発語のどもりなどがみられる吃音。

 

Z世代の特徴1.周囲に干渉しない→周囲に無関心?

Z世代は、他人にあまり干渉することはなくマイペースに行動します。彼らの他人に干渉しない行動が、「周囲に無関心」と誤解されてしまい、共感力がない人だと思われることも。Z世代は自分が興味のあることを大切にするため、一見、無関心に見えるかもしれません。結果的に「Z世代は周りの状況を見て判断ができない世代」と思われてしまいます。「やる気は行動で示す」という考え方はZ世代には通用しません。これはZ世代に「熱意がない」ということではなく、「やる気があることを伝える方法がうまくない」という特徴でもあるのです。

 

・Z世代の特徴2.こだわらない⇨こだわりがない?

Z世代は、小さなことにあまりこだわりません。例えば、「失敗してもクヨクヨしない」ように見えます。反省していないのではなく、足踏みするより前向きでありたいと考えることが多いのです。反対に誰かが失敗しても、彼らが相手を責めることはほとんどないでしょう。これはZ世代の魅力のひとつでもあります。ただ「こだわらない」ことが「こだわりがない」と誤解されてしまうことがあります。2つの言葉の意味は大きく異なりますが、失敗について長々と議論を好む人にとっては、Z世代の言動は「こだわりがない」「また失敗するのではないだろうか?」と不安になるかもしれません。しかしZ世代は、彼らのやり方で仕事にこだわりをもって取り組んでいます。一度、仕事について質問してみると、ユニークな回答が返ってくるかもしれませんよ。

 

・Z世代の特徴3.自ら動かないで指示を待つ→自分で考える力がない?

ピラミッド構造の社会経験がなくフラットな関係を好む彼らは、職場内のコミュニケーションツールもさまざまにあると考えています。職場内の連絡や家族とのコミュニケーションをチャットで済ますことは、彼らにとっては「当たり前」のことなのです。実際に、彼らとコミュニケーションをとれば、とても興味深く話を聞いてくれて共感してくれます。もちろん自分の意見もしっかりと伝えることができるのです。ただ「自ら」発言や行動することが少なく、迷ったら誰かに相談することも必要だと認識しているため、「自分で考える力がない」と思われがちです。

「迷ったら誰かに相談する」特徴はZ世代の「協調性」の高さを表しており、SNSで写真や動画をシェアして、お互いに“いいね”やコメントで「評価・コミュニケーション」を活発にすることと関係が深いと考えています。筆者がスマホをもった10年前は、SNSは「共感」するだけのものでしたが、Z世代ではコミュニケーションツールとして「強調」へ変化しています。Z世代は、自ら発言することは少なくてもコミュニケーション力をしっかりもっているといえるでしょう。

 

まとめ

「発達障害」が広く社会に知られるようになり、少し周囲と違うだけで「もしかして発達障害?」と誤解する人が増えたように感じます。もっとも誤解されがちなのは、周囲の変化に気がつかないことが、「周囲に無関心」「自分の興味のあることだけに夢中になる」と思われてしまうことです。また、気軽にチャットでコミュニケーションを済ます彼らを「コミュ障」と名づける人もいます。そして残念なことに、上記のようなZ世代の特徴が「発達障害」と簡単に結論づけられ、やり過ごされてしまっています。これらの周囲の決めつけた対応が、Z世代の若者を悩ませ生きづらくさせています。

大人も当たり前のようにスマホをもつようになり、スマホを操作する時間も増え、Z世代の子どもとのコミュニケーションが減っています。Z世代は「突然うまれた新しい人種」なのではなく、大人や社会、時代の流れに影響をうけながら形成されていった世代なのではないでしょうか。Z世代を育てたのは私たち大人であり社会であることも、忘れてはならない事実でしょう。

Z世代と距離をとりながら対応に悩むくらいなら、自ら積極的に彼らに声をかけ、Z世代の魅力を感じてみてはいかがでしょうか。Z世代に対する「決めつけの色メガネ」はなくなり、これまでとは違う新しい関係をきっと築けることでしょう。

[執筆:大野あきえ(公認心理師/社会福祉士/AFP)]

【参考】
※1. 発達障害について:厚労省『知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス』「発達障害」より(2022年12月27日閲覧

※写真:metamorworks / PIXTA(写真はイメージです)

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