「親との関係がうまくいかない。でも、子育てを助けてもらっているから出ていくわけにもいかない…」
核家族には核家族の大変さがあるように、同居家族には同居家族の大変さがありますよね。今回は、同居家族の中でも実母・実父との関係に悩んでいる方へ、アンガーマネジメントの専門家がイライラしない付き合い方について紹介します。血がつながっているからこその悩みを、一緒に解決していきましょう。
実父母と同居は楽じゃない
実の親だから大丈夫と思って同居したものの、実際には舅姑問題と同じような悩みだけでなく、実父母だからこその問題に悩んでいる方も多いようです。例えば、実の親子なので遠慮なく子育てに口を出してくる、できていないと叱られる、といったことにストレスを感じることもあるのではないでしょうか。
もちろん、同居に関してはデメリットばかりではありません。共働き家庭の場合、子どもの保育園の送迎や食事の世話、発熱時の子どもの対応など、親がいてくれることで助かっていることもたくさんあるでしょう。感謝の気持ちがあるからこそ、余計にストレスを感じるではないでしょうか。
なぜ実父母にイラっとするか
ストレスを感じながらも、同居する方が自分にも子どもにもメリットが大きいことは、あなたにもわかっていますよね。もし、メリットがないと感じているなら、きっとすでに別居しているはずだから。もしあなたが、子どものこと、金銭的なことなど同居のメリット手放せられないなら、どうにか実父母とうまくやっていくしかないのです。では、なぜ実父母にイラっとするのか? それは、実父母があなたにとって身近な存在だからです。
「イラっとする」怒りの感情は、身近な対象に強くなる性質があります。「自分のことを大事にしてくれて当然」「自分の味方でいてくれて当然」「助けてくれるのは当たり前」「自分のことを分かってくれているはず」などの勝手な思い込みが強くなるからです。この思い込みによって、「なんで理解してくれないの!」「なんで助けてくれないの!」「なんで思い通りにならないの!」といった反発心がわいてくるからです。
実父母との関係悪化は子育て環境の悪化
ここで、その反発心に任せて怒りを爆発させると実父母との関係は悪化してしまいます。悪化すればするほど、あなたのストレス度はドンドン高くなってしまいます。それは子育てにも影響を及ぼすことになるでしょう。なぜなら、怒りの感情は情動感情だからです。家庭内にイライラしている人が多ければ多いほど、その空間は怒りで充満していきます。それが人から人へ感染し、パートナー、子どもたちの感情も怒りに満ちていくのです。怒りの感情はエネルギーが強いので、心身にネガティブな影響を与えてしまいます。そうなれば、もう家庭崩壊、この状態は危機的状況です。
あなたが一番大事にしたいことは何ですか?
ここで、一呼吸おいて考えてみましょう。あなたが一番大事にしたいことは何ですか? もし、家族との幸せな毎日を望むのなら、今抱えている怒りの感情は手放さなくてはなりません。幸せを手に入れるためにイライラは不要です。だとしても、同居は継続しなければならないとなれば、あなたにできることは怒りの感情をコントロールすることです。怒りの感情をコントロールする方法にアンガーマネジメントがあります。アンガーマネジメントは怒りで後悔しない怒り方をすることで、イライラと上手に付き合う方法を実践することです。
会話の中でイラっとしたときどうしたらいい?
アンガーマネジメントは、怒ることがダメだとは言っていません。ただ、人間関係を壊すような怒り方をすることはNGなので、衝動的に怒りを爆発させることはやめてほしいのです。会話の中でイラっとしたとしても、すぐに反応せず、ゆっくり息をして最後まで話を聞くようにしましょう。例え、反論があったとしても、です。その間、深呼吸を繰り返し、頭を冷静な状態に保ちながら、自分が伝えたいことを整理するのです。伝え方のポイントは、相手を責めない言い方です。
例えば、「お母さん(お父さん)は、そう思うんだね。ありがとう。実は、私は〇〇(理由)だから〇〇したいと思っているの。だから協力して(手伝って・助けて)ほしいんだけど、お願いできるかな」です。普段の感謝の気持ちと、自分の気持ちと理由を添えて伝えます。語尾はお願い口調がおすすめです。
まとめ
人間関係が希薄になりつつある現代社会で、子どもにとって親子三代で子育てをしてもらえる環境はとても幸せなことです。でも、その環境がストレスとイライラで充満しているものだとしたら、とても残念ですよね。家族の人数が増えることで、コミュニケーションの工夫は必要になります。でも、ほんの少し気持ちを落ち着かせられたり、言葉の使い方を変えたりするだけで関係性は随分よくなります。イライラをコントロールすることは、あなた自身の子育てを楽にする大切なスキルであることは間違いありません。
[執筆:野村 恵里(子育て・保育専門研修講師)]
※画像 : shuu / PIXTA(画像はイメージです)