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不登校とうつ病、親として子の不登校に学ぶこと
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不登校とうつ病、親として子の不登校に学ぶこと

不登校は病気?

以前は心身ともに元気だった我が子が不登校になったとき、親は戸惑います。まさに青天の霹靂といった感じで、呆然とするでしょう。筆者の息子は高校での不登校でした。高校は単位が取れないと進級できなくなります。だから、早くなんとかしなければという強い焦りがありました。そんなとき、義母からは「病気なのでは?」と心配されました。可愛い孫を思ってのことだと思いますが、筆者は親としてプレッシャーを感じました。病気だとすれば、治すことを考えなければなりません。それも親の大事な務めだと思ったからです。

そして緊張しながら息子を病院に連れて行きました。初老の男性医師は穏和な人柄が感じられ、話をしっかり聞いてくれました。その上で「せっかくいい高校に入れたのにねえ。どうにか授業に出てほしいよね」と親の気持ちにも寄り添いながら、息子に対しても優しい眼差しを向けてくれました。そして医師から「息子さんに病名をつけるなら……」と切り出された筆者は、メモを取る準備をして身を乗り出しました。すると、その医師は「病名をつけるなら、勇気が出ない病気だねえ」と続けました。

 

不登校と、うつ病になる人の共通点

不登校は学校に行けない状態を指して言うもので、もちろん、病気ではありません。ただ、うつ病や精神疾患を併発している場合もありますから注意は必要でしょう。不登校になる子とうつ病になる人には、共通点が見受けられます。基本的に真面目で几帳面なところです。

例えば以下の点が挙げられます。
・完璧を目指す
・二者択一で白黒はっきりさせたい
・融通が効かない
・優先順位がつけられずに抱え込む
・人目や人からの評価を気にして悲観的になる
これらは自分を追い込み、ストレスを溜めてしまうことになります。

 

うつ状態とうつ病の違い

うつ病とは、うつ状態(抑うつ状態)が長く続き、生活に支障が出て苦痛が強くなるものだといわれています。「うつ病」と「うつ状態」は明確に区別されているのです。不登校は学校に行けない状態のことをいいます。つまり大多数は、うつ状態であると考えられています。何らかの原因でエネルギーが消耗してしまい、学校に行けないほど、うつ状態になったのです。うつ状態を信号で例えるなら黄信号です。うつ病にならないよう注意しましょうというシグナルです。では、うつ状態を改善するために何ができるでしょうか。

 

ピンチはチャンス

「若い時の苦労は買ってでもしろ」という諺があります。時代の流れに伴い、価値観も変わり、苦労は買ってまでする必要はないかもしれません。しかし試練というものは意に反してやってきて、挫折することもあるでしょう。挫折というのは、やはり若い頃のほうがやり直しができ、痛手が少なくて済むのではないでしょうか。何より家族のサポートも受けやすいと思います。不登校についても、うつ状態を長引かせてうつ病にしないために、できることがあると思います。自分と向き合うことで、考え方の癖に気づき、気持ちが楽になる考え方にシフトしていけたらいいですね。

・白黒はっきりさせようとしない
・まあいいかと考えて完璧を目指さない
・自分は自分、人は人と思える
・物事に優先順位をつけて、一気にやろうとしない

これらが、うつ状態を長引かせない秘訣です。不登校というピンチは、若いうちに与えられた試練。これからの長い人生をより良く生きる為に、欠点を含めた自分をまるごと受け入れて、楽な考え方を身につけるチャンスだと捉えてみてはいかがでしょうか。「鉄は熱いうちに打て」という諺もあります。大人になる前の若いうちこそ、自分と向き合う大切なタイミングだと前向きに捉えてみましょう。

 

傾聴のすすめ

現在、筆者の息子は親元を離れて、社会人として元気に過ごしています。ある日、筆者は当時に行った病院の近くを通りがかりました。しかし、そこに病院はありませんでした。医師はかなり高齢だったし不思議なことではありませんが、複雑な気持ちもありました。感謝の気持ちを伝えたかったからです。

我が子が不登校になった時、親は原因を探します。今思えば、病気なら仕方ないという気持ちから、病名をつけてほしかったのかもしれません。当時、医師は「病名をつけるなら勇気が出ない病気」とおっしゃいました。それは、息子が勇気を出せるために何ができるか考えてみようという問題提起だったように思います。あの医師のように共感しながら相手の話を聴く姿勢(傾聴)が大切です。薬より何より傾聴こそが、不登校の子にとって勇気を生み出す特効薬となるのではないでしょうか。聴くという字には、耳と目と心が入っています。我が子が気持ちを整理して、心身共に元気になって勇気を出せる日を信じて、親は口出しは控えて耳と目と心で話を聴いてみましょう。

[執筆:山下 響子(心理カウンセラー/学習教室主宰)]

※画像:metamorworks / PIXTA(画像はイメージです)

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