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親の認知症介護、家族で揉めない介護分担のポイント
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親の認知症介護、家族で揉めない介護分担のポイント

キーパーソンを中心にチームで行う認知症介護

認知症の方は何度も同じ話をしたり聞いたりします。今日が何月何日何曜日かが分からなかったり、季節に適した服装が選べないこともあります。また、新しいことを覚えられなかったり、着替えや身支度など順序立てて行動することが難しかったり、いろいろな症状が出ることがあります。そのような状態になったとき、あなたは認知症の親にずっと付き添いができますか? ある日、突然始まる親の認知症介護。脅かすわけではありませんがいつまで続くか、どれだけ大変かわかりません。そこでこの記事では、健康管理士・心理カウンセラー、そしてケアクラークでもある筆者が、一人で頑張りすぎずキーパーソンを中心にチームで行う認知症介護方法について、自身の家族介護の経験を含めてお伝えします。

 

介護における立場別の考え方3パターン

認知症の方の介護を、一人で続けていくことは不可能です。そこで兄妹姉妹で役割分担を考えることになると思います。役割分担をする際には、まず医師やケアマネジャーとの窓口となる「キーパーソン」を決め、それぞれが分担した必要最小限の介護を行うことを心がけると気持ちが楽になります。筆者が実際に行っている、この「キーパーソンを中心にチームで行う認知症介護」を進めていくときには、大切な立場別の考え方をキッチリ押さえておけば、大変な認知症介護も心にゆとりを持てると思います。

1.「キーパーソン」の立場

キーパーソンは、家族や親戚の意見を取りまとめ、介護の方針を決める際に大きな役割を果たす人です。医師やケアマネジャーとの窓口となり、親の認知症介護におけるチームリーダーと考えて行動するのが良いでしょう。

2.キーパーソンをサポートする立場

キーパーソンをサポートする立場の場合に気をつけることは、医師やケアマネジャーとのやり取りはキーパーソンに任せる、またはキーパーソンと一緒に対応することです。現在、キーパーソンをサポートする立場で介護に当たる筆者が心がけていることは、キーパーソンに「私にできることはやるので、遠慮なく何でも言ってね」と伝えること、そして都合の悪い依頼をされた時は「できない」や「無理」という返事ではなく、具体的に「今すぐは無理だけど、次のお休みの日ならできるよ」というように、「~ならできる」という返事をすることです。つまり、キーパーソンの気持が楽になる(一人で頑張らなくていいんだと思える)声かけと、必要最小限のサポートをすることです。

3.介護される本人の立場(介護される本人への対応)

認知症の方でも、何もかも全てが分からなくなっているわけではなく、認知症状はその時々で違うこともあります。例えば、既に退職しているのに会社に行かなければと言い出したり、物事を順序立てての行動が難しい状況になって身支度にとても時間がかかったり。ですが、介護される本人にも今できることが必ずあります。その「今できること(残存機能)」を維持するために、時間がかかっても、できることは本人に行ってもらうように声かけをしましょう。

時間がかかるからといって介護者が手伝うと、次回からは自分でやることではなく、手伝ってもらうことになってしまい、介護者の負担を増やすことになる典型的パターンです。そのような時は「今回は時間がないから手伝うね」と声をかける。次回からは、時間に余裕をもって「ゆっくりでいいから」と声をかけ、できるだけ本人ができるよう促すようにしましょう。

介護される本人の話を聞き、できる限り本人の意思に近い必要最小限の介護を目指すことが大切です。介護する人・される人 、サポートしてくれるたくさんの人々、全て含めてチームで介護を進めていくことが理想の姿だと筆者は考えています。

 

介護費用は、基本的には介護される方の支払いで

介護には費用がかかります。介護費用は、基本的には介護される本人払いで進めていくのがよいと筆者は考えます。定年まで勤め上げ、退職金や年金収入があると考えれば、介護される本人の預金や年金で賄える範囲で介護サービスなどの利用料を支払うのが妥当だと思います。介護保険の利用料は口座引落し(口座振替)というケースが多いので、本人名義の口座からの引落しが可能です。

 

お互いに感謝の気持を忘れずに伝えましょう

昔々、親は子供に家督を譲り子供の世話になるのが当たり前でしたね。だから高齢者の多くは「子供が親の介護をするのは当たり前」という考えを持っていると思います。ですが世の中の流れとともに、世代別に考える「当たり前」も変わりました。

筆者は義父母の介護経験や自身の療養生活、そして両親と伯母二人の介護サポートを続けるなかで、様々なことを学びました。例えば「自分が思う当たり前の生き方」よりも「自分らしく生きること」の大切さ。立場が変われば、対応も変わる。人がどう思うかではなく、自分がどのように思い、どのように行動するかが重要。申し訳ないと思う気持ちから出る「ごめんね」より、感謝の言葉「ありがとう」で心が楽になれることなどです。ですから、介護する人・される人、またサポートしてくれる人々に対して、「ありがとう」という感謝の気持ちを言葉できちんと伝えることで、きっとお互いに気持ちのよい介護ができると考えています。

[執筆:林 裕美(健康管理士/心理カウンセラー)]

※画像:tsukat / PIXTA(画像はイメージです)

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