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「うちの子、不登校かな?」と思ったら…現役の学校相談員に学ぶ、不登校の原因と対応

「うちの子、不登校かな?」と思ったら…現役の学校相談員に学ぶ、不登校の原因と対応

2023年度の小中学校における不登校児童生徒数は過去最多の34万6482人。前年度から増加しており、11年連続の増加です(令和5年度の文部科学省発表より)。小中学校のお子さんをもつ保護者にとっては他人事ではありません。

子どもが学校に行きたくないと言い出したとき、親としては「どうして?」「このまま不登校になるのでは?」と不安でいっぱいになりますよね。けれども、不登校は突然に起こるのではなく、小さなサインが積み重なって表面化するケースがほとんどです。

この記事では、産業カウンセラーであり現役の学校相談員でもある潮田わかさんにお話をうかがいました。不登校の原因として多く見られる「3つのきっかけ」と、家庭でできる「2つの関わり方」とは? 潮田さんが学校現場で得た実践的な知見を整理してお伝えします。

<お話してくれた方>
潮田わか(うしおだ・わか)
心理カウンセラー・産業カウンセラー
著書『「うちの子、不登校予備軍かな」と思ったら読む本』(2025年6月)
[略歴]心理カウンセラー・産業カウンセラーの資格を取得後、メンタル不調や人間関係で悩む方の話を聴くカウンセラーとして活動。現在は学校相談員として中学校・小学校で子どもや親の悩みを聴く相談役として活動。多くの子どもと母親と向き合う中で、親子関係・家族関係の奥深さを探求。不登校問題の改善に役立つ具体的な視点や対応法を提案し、支援している。
[現職]小学校相談員、女性専用カウンセリング『ボイスマルシェ』公式カウンセラー
[保有資格]産業カウンセラー・全心連プロフェッショナル心理カウンセラー・認定アートセラピスト

 

■不登校のサインを見逃さない

「朝になるとお腹が痛いと言うのに、午後になるとケロッとしている」「学校がある日の朝だけ頭痛を訴える」。こうした様子に心当たりはないでしょうか。

熱もなく、病院でも異常が見つからないと「怠けているのでは?」と思う親御さんも少なくありません。しかし実際には、心と体が限界に達したサインであることが多いのです。学校の時間帯だけ体調が悪くなるのは、心のストレスが身体症状として現れている典型例。「心が弱い(気持ちが弱い)」と決めつけるのではなく、子どもが出しているSOSと受け止め、早めに対応することが大切です。

 

■不登校によくある3つの原因

1. 勉強が分からない

小学校に入ると「できる子」「できない子」がはっきりしてきます。特に、相談室に訪れる子の特徴として、「国語」でのつまずきが多く見られます。漢字が覚えられない、文章の意味がつかめない、記述問題が書けない…。文章の意味がつかめないため、算数の文章問題や社会科なども苦痛になります。

そのほか、体育や音楽などの実技科目では不器用さゆえに、できない、恥ずかしい、笑われた、などのネガティブ体験をすると「自分はできない子だ」という思い込みを強めてしまうのです。
「頑張っているのにできない」という経験は子どもの自尊心を大きく傷つけます。親としてできるのは、まず担任の先生に相談すること。そして必要に応じてスクールカウンセラーなど専門家に授業の様子を観察してもらうと、客観的に原因が見えてくることがあります。

2. 集団生活が苦手

家庭では元気いっぱいでも、学校という集団の中に入るとエネルギーを消耗してしまう子がいます。聴覚過敏で教室のざわめきや人の声に過敏に反応してしまう子、多動傾向で注意を受けやすい子、不安気質で大人数の場に強い緊張を感じる子……。背景はさまざまですが、「普通の子どもらしい生活」がかえって負担になっているケースは少なくありません。

たとえば給食や係活動のように、周囲のペースに合わせて動くことが苦手な子がいます。箸やフォークを口に持っていく感覚が難しく、時間内に食べ終わることができない。役割分担をうまくこなせない。そのような小さな失敗が積み重なり、「学校はつらい場所」となってしまいます。

「うちでは明るく元気なのに、なぜ学校では……?」と親が混乱することも多いですが、子どもなりに必死に学校で踏ん張っている証拠なのです。

3. 友人関係の変化

もう一つ大きいのが人間関係の問題です。「最近、友達の名前が会話に出てこない」「家でゲームばかりしている」など、日常の中のささやかな変化がサインとなることがあります。

この背景には「対人関係の経験不足」が隠れている場合もあります。習い事や塾で毎日が埋まり、子ども同士が自由に遊ぶ時間が少ないと、トラブルが起きたときの解決スキルを身につけにくいのです。小さなすれ違いでも深刻に受け止めてしまい、学校に行くのが怖くなることがあります。

親にとっては見えにくい部分ですが、「人間関係のストレスも大きな原因の一つ」と意識しておくことが重要です。

 

■親ができる2つの関わり方

1. 否定しない聞き方

子どもが勇気を出して「行きたくない」と打ち明けたときに、つい「それはあなたも悪いのでは?」と返してしまう親御さんは少なくありません。正論を言いたくなるのは「わが子を正してあげたい」という気持ちからですが、子どもにとっては「話しても否定される」と感じ、親への相談をしなくなります。

大切なのは、子どもの話を最後まで話を聞くこと。雑談から始めるのも効果的です。意味のない会話の中で子どもがリラックスし、ふと本音を漏らすことがあります。親が「聞き役」に徹することで、子どもは安心して心を開けるのです。

2. 安心できる言葉かけ

次に大事なのが、子どもが安心できる言葉かけです。

たとえば「今日は学校に行くの? 行かないの?」と二択を迫るのは逆効果。代わりに「お母さんと一緒に登校ならどうかな?」「別室なら過ごせそう?」「短時間だけなら行ける?」と選択肢を示すことで、子どもは「自分で選べる」という感覚を持つことができます。

それでも無理なときは、思い切って休ませる判断も必要です。休むことでエネルギーを回復し、再び学校へ行けるようになる場合もあります。大切なのは「休んだら終わり」ではなく、「休むことも一つの方法」と認めてあげることです。

 

まとめ

不登校は「心と体の限界サイン」であり、決して怠けではありません。原因の多くは「勉強」「集団生活」「友人関係」にあり、誰にでも起こり得ます。親にできることは、シンプルにして効果的な「否定しない聞き方」と「安心できる言葉かけ」です。たったこれだけでも、子どもの心に「ここなら安心して話せる」という居場所をつくることができます。

親一人で抱え込むのではなく、学校や専門家ともつながりながら、子どものSOSをキャッチし支えていきましょう。

[執筆:ノーツマルシェ編集部]

※画像:mits / PIXTA(画像は本文とは直接関係ありません)

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