それまでは何ともなかったのに、気になりだした途端、いつものように振る舞えなくなることはよくありますよね。なんだか自分だけが空回りしているみたいでイライラしたり落ち込んだり。好きな人の前でも自然体でいられる方法を心理カウンセラーがお伝えします。
なぜ、自然体でいられなくなるの?
人を好きになるということは、理屈ではなく、ある日心がときめくことから始まります。そうなると、今までの友達関係や知り合い関係程度の人とは違い、自分の中で特別な人に格上げされます。好きな人に嫌われたくない、好かれたいと誰でも思います。だからこそ、自分のことをよく見せたいと思うのも当然の流れです。ドキドキ緊張したり、挙動不審になったり、ぎこちなくなりますね。最初の頃は誰でもそうです。
ところが、相手の好きなタイプを完璧に演じる人がいます。可愛い人、大人っぽい人、天然キャラ、控えめで従順なタイプなど、演じているうちにそのキャラクターが固定されていきます。そうなると本来の自分とのギャップがありすぎて、自分を出し損ねます。またどこか自分に自信がなく素の自分を知られると嫌われると思うと、自分を隠したくなります。恋愛が勝ち負けになっている人は、相手に惚れさせたいという思いが強く、駆け引きをするので自然体ではいられません。そして、そもそも自然体がどういう状態なのかがわからないという人もいます。
自然体ってどういう状態?
「自然体」がどういう状態かを説明する前に、自然体でない状態がどのような状態か見ていきましょう。自然体でない状態というのは、意識し過ぎている状態です。意識し過ぎたがゆえに、相手にそっけない態度を示したり、相手のひとつひとつの言葉や行動を深読みしたりします。では自然体の状態はというと、気負いがなく、無理をしていなくて、見栄を張ることもなく、自分に正直で裏表がない状態です。そういうときは、相手を過剰に意識することなく、自分の言いたいことを我慢せず言えるようになります。
自然体でいられる相手はどんな人?
あなたが自然体でいられる相手というのは、素の自分を受け入れてくれる人です。ここで注意しておきたい点があります。自然体でいられると自分の言いたいことを我慢せずに言えるようになると述べましたが、自分の言いたいことやわがまま、無理難題を何でもきいてくれる相手が良いというわけではありません。自分だけが自然体な関係は長続きしないでしょう。自然体でいられる相手というのは、自分も自分を偽らないでいい相手であり、相手も自分に対して自然体で接してくれる人なのです。
自然体だとすべてがう上手くいくという幻想に囚われない
自分の意見や気持ちを我慢せずに言えることはとても大切です。そして必要以上に自分をよく見せようとしない、相手のことを深読みしないことも大切になります。しかしそれと同時に、相手を思いやる気持ちや配慮も必要です。いつどのようなときでも自分の言いたいことを言うのが良いのではなく、そのときの相手のことを考えることも大事なのです。これは、これを言うことで相手が自分をどう思うか、嫌われたりしないかという、自分に対してベクトルが向いている状態ではありません。相手の立場に立って相手を思うという、相手に対してベクトルが向いている状態です。またお互いが自然体でいられる関係を続けるために、日々自分をアップデートしていきましょう。お互い自然体で接していく中で、ときにはケンカをしたり悩んだりすることもあります。そういった経験を経て精神的な自立も培われ、絆も深くなっていきます。
好きな人の前で自分らしくいるために
片想いのときや、付き合ってまだ日が浅いときなどは、相手に気に入られようと頑張ることは普通のことです。少し無理していても仕方がないでしょう。しかしずっとその状態では自分が疲れます。少しずつ自分を出していき、等身大の自分でいたいですね。あなたは等身大の自分のどのようなところを相手に好きになってもらいたいですか? そこが、自分でも自分らしくいいなと思っているところになります。まずは等身大の自分の、好きになってほしいところを見つけていきましょう。そして自分らしくいるためには、素直さも大事です。何かに引っかかる癖や深読みしてネガティブに捉える癖があると、心の自由度が低くなっていきます。素直になる練習も、怖がらず取り入れていきましょう。
[執筆:上土井 好子(公認心理師・心理カウンセラー)]
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