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認知症と社交ダンスの関係…高齢者施設での驚きの事例
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認知症と社交ダンスの関係…高齢者施設での驚きの事例

認知症予防のための生活習慣とは?

「何歳になっても健康に生き生きと過ごしたい!」全ての人に共通する願いですよね。人生100年時代となった現代では、認知症は誰にとっても他人事ではなくなりました。認知症の根本的治療薬や予防法は十分には確立されていないとのことですが、医療機関や役所等で一般的に認知症予防に良いとされる生活習慣として「食事の工夫、適度な運動、積極的な社会参加」が挙げられています(※1,2,3)。なお現時点において、「予防」とは「認知症にならない」という意味ではなく、「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」という意味で用いられているようです。

・認知症予防のために良いとされる生活習慣
1.適度な運動
2.食事の工夫
3.積極的な社会参加

高血圧や高血糖、内臓脂肪型肥満などの生活習慣病は認知症のリスクを高めるといわれています。食生活を整え、運動習慣をつけることは認知症以外の病気のリスクを減らすことにもつながります。また、近年ではコミュニケーションと知的活動が認知症予防に関わっていることも研究されています。食事、運動、コミュニケーションが大きな鍵になりそうですね。

 

認知症と社交ダンスの関係、社交ダンスを勧める3つの理由

筆者は、カウンセラーでもあり社交ダンス教室を経営しています。上述の認知症予防によいとされている生活習慣を知ったとき、社交ダンスは「適度な運動、積極的な社会参加」という要素を満たす絶好の活動だと感じました。その理由は主に次の3つです。

理由1.誰でも始められる適度な運動強度

社交ダンスは歩くことができれば、誰にでもできる運動です。ウォーキング程度の軽い運動強度からスタートできますので、スポーツが苦手な方、高齢の方でも始めやすいでしょう。仲間やパートナーと一緒に取り組むことでお互いに励ましあうこともできますし、夫婦共通の趣味としてもお勧めです。

理由2.人とのつながり、コミュニケーションがいっぱい!

社交ダンスはコミュニケーションツールとして発展したダンスで、基本的には男女のペアで踊ります。筆者のスクールの生徒さんのケースでも、異性の存在を意識することで身だしなみにも気を配るようになり、見た目から若返る方がほとんどです。また、ペアで協力し合わなければ上達できないので会話や試行錯誤も多くなり、脳にとっては桁違いの刺激が発生することは間違いないでしょう。

理由3.音楽であのころの記憶が鮮明に!

筆者は高齢者にレッスンをする際には、その方の良く知っている音楽を選ぶように心がけています。生徒さんの青春時代の曲がかかると、皆さん瞳がキラキラと輝きはじめ、不思議と体の動きがいつもよりも良くなり覚えるのも早くなるのです。昔の記憶を蘇らせることを「ライフレビュー」といい、脳を活性化させる効果が認知症の治療にも活用されているそうです。五感に紐づけられた記憶を思い出す体験は、脳を活性化させ若返らせる効果があります。社交ダンスは同窓会に行かなくても、仲間と一緒にあの頃の若々しい気持ちを取り戻せる格好の手段になり得るでしょう。

 

高齢者施設で実際に目にした驚くべき効果

私は社交ダンスを教える中でたくさんの生徒さんと関わってきました。80代以上の方にもレッスンをしていますし、高齢者施設での出張レッスンも経験してきました。そのなかで印象に残ったエピソードをご紹介します。

・杖が不要になった80代 Y様
杖をつきながらスタジオに通っていた男性Y様のエピソードです。Y様は60代から社交ダンスを経験されていましたが、脳梗塞の後遺症から左足が不自由になり、杖なしでは歩けなくなりました。雰囲気だけでも味わえたらということでグループレッスンに参加なさいましたが、最初は動くこともままならない状態でした。仲間に励まされながら毎週通ってこられ、1か月ほど経つと杖なしでステップを踏めるところまで回復しました。あるとき、Y様は杖をスタジオに忘れて帰ってしまいましたが、それ以来、杖が不要になったのです。

・高齢者施設での体験会
高齢者施設のレクリエーションとして、体験レッスンを依頼された時のことです。認知症や車いすの方も多く、スタート時には表情も乏しく、無反応な方ばかりでした。しかし、座ったまま音楽に合わせて簡単なエクササイズをしていくうちに、皆さんの表情が明るくなり笑顔が見られるようになったのです。そしてなんと車いすの方が立ち上がり、踊りだしたのです! これには施設のヘルパーさん達もびっくりでした。

・認知症のお母様を連れて見学に来た女性 T様
T様は、認知症のお母様を連れてスタジオに見学に来られました。お母様は40年前に社交ダンスをされていて、スタジオでみなさんが踊っているのを見ているうちに大いに刺激を受けたのか、ダンスをしていたころの事をはっきりと話し始めました。踊ってみたいと希望されたので体験レッスンを勧めると、昔に習ったステップを思い出しながら踊ることができました。T様は後日「その日の母は家に帰ってからも頭がはっきりしていて、夜も良く眠れていました」と嬉しそうに話してくれました。T様の「母の認知症が進む前に連れてきていたら、ここまで認知症が進まなかったかも…」という言葉が今でも印象に残っています。

 

「大好き!」が心を若返らせる

なにが人を老いさせるのでしょうか? 年月には違いありませんが、それだけにしては個人差がありすぎるように思いませんか? 食事、運動、睡眠といった体を健康に保つ習慣はもちろん大切です。しかしそれと同時に、心を喜ばせる「大好き」に出会うことも考えてみてほしいのです。体が不自由になってからでなく、健康なうちに仲間とコミュニケーションを取りながら楽しんで続けられる、生きがいとなりうるモノに出会ってほしい。もしもまだ見つけていないのなら、社交ダンスを選択肢にいれてみませんか? 仮に自分に合わなかったとしても、「初めてのことにチャレンジしてみた!」というその体験が、先の人生を豊かにする大きな一歩になることは疑いようのない真実なのです。いくつになっても大好きなことにチャレンジして、大いに笑って大いに失敗して、そんな彩り鮮やかな人生のきっかけはすぐ隣にあるのかもしれませんよ!

[執筆:熊木 あかね(コーチ/カウンセラー)]
社交ダンスインストラクター/熊木ダンススクール経営

【註】
※1. 厚生労働省『認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(概要)』6ページより「認知症の病態解明は未だ不十分であり、根本的治療薬や予防法は十分には確立されていません」
※2.東京都健康長寿医療センター「第155回老年学・老年医学公開講座」『認知症、こうすれば予防できる!?』司会 東京都健康長寿医療センター研究所 副所長 新開省二
※3. 大阪府ホームページ「認知症の予防について」2021年3月3日更新

※写真はイメージです(Sirichai / PIXTA)

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